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全く理解が追いつかない私に対し、美堂さんは
満面の笑みを浮かべる。
心拍数がまた上がった。
眼鏡の奥の瞳が柔らかな弧を描く───。
「あの瞬間、僕は思わず悶えたくなるほどの快感に
襲われました。」
「…はい?」
思わず飛び出した私の返答はかなり間抜けな
ものだった。
「自分でも驚きましたよ。
まさか尽くすことにこんなにも喜びを
感じるなんて…」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
目の前で嬉々として語り出す美堂さんに
慌てて待ったをかける。
そんな私を見て"何か?"とでも言いたげに
また眼鏡をクイッと押し上げた。
「なんでそんな話になるんですか!?」
「何故って、今言った通りですが。」
「おかしいじゃないですか!
だって、私はただタンブラーをもらっただけで…」
何だか頭がぐるぐるする。
でも絶対に絶対におかしな話だ。
私が言っているのは正論だと思う。
それなのに美堂さんはその綺麗な顔で
至極真面目な顔をしてこう言った。
「おかしくなんてありません。
それはただのきっかけに過ぎないのですから。」
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