シモベになりたい男

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「またって…」 「"また"でしょうが! これで何度目よ?」 言いながらテーブルに肘をついたのは、私の 友人であり同僚の谷口千晴(たにぐち ちはる)。 やや口調は乱暴だけど、私にとって頼りになる 存在だ。 いつも相談に乗ってくれる。 千晴は眉間に皺を寄せたまま話を続けた。 「ストーカー男から始まって、DV男でしょ? あとヒモ男に浮気男に不倫男と! いろいろあり過ぎて忘れたけど、極めつけが 変態男?」 「変態…」 「ほんと、ダメ男ホイホイなんだから。」 他人の口から聞くと、やっぱりグサッとくる。 ごく普通の人生を送ってきたつもり。 だけど、私には人と違うことが一つだけあった。 それは…男運の悪さだ。 何故だか分からないけど、私を好きになる人は いつも何かしらの問題がある。 いわゆるダメ男という奴だ。 「やっぱりおかしいよね?」 「おかしいって言うか、つまりはそういう 性癖なんでしょ。」 「えっ…?」 「だってこの世には、鞭で叩かれて喜ぶ男が居る くらいなんだから。 そいつは尽くすことが快感なんじゃないの?」 「あ…。」 "快感"って確かに美堂さんは言ってた。 そうか。 あれはそういうことだったのか。 言われて初めて納得した私を見て、千晴は軽く ため息をつく。
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