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気づいたら、思いっきり言い放ってた。
美堂さんは驚くだろうと思っていたけど、虚を
つかれたようにポカンとしている。
…何、その反応。
恥ずかしいやら、悔しいやら、腹立たしいやらで
もういろんな感情がごちゃ混ぜになった私は
次の瞬間走り出していた。
逃げよう。
もう逃げるしかない。
「姫野さん!」
後ろから美堂さんが追いかけてくるのが分かった。
あんまり運動は得意じゃないから、どんどん
追い付かれる。
エレベーターホールの前まで来て、閉じようと
していたドアに体を滑り込ませようとしたら
ガシッと腕を掴まれた。
振り払おうとしたけど、それがあまりにも強い力
だったから敵わない。
目の前ではそのままドアは閉まって、エレベーター
は行ってしまった。
はぁはぁと肩で息をしていた私。
腕を掴まれたまま、美堂さんの方を見ることが
出来ない。
「勘違いではありません。」
沈黙を破るように美堂さんは言う。
その言葉に反応した私は、反射的に顔を上げて
美堂さんを振り返ってしまった。
ドクンッと心臓が跳ねる。
眼鏡の奥の瞳が私を真っ直ぐに見つめて
いたから───。
「僕は貴女のことが好きです。」
美堂さんの突然の告白に、今度は私がポカンとする
番だった。
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