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作品中の悪役の声優に、私が一目ぼれした彼が採用された。私としても、彼に悪役をしてもらったら、自分の作品が更に面白いものになるだろうなとは考えていたが、それが本当になるとは思っていなかった。
決まった瞬間、何度も確認してしまった。しかし、それは本当だったようで、さらに驚くことに、彼の方は私の作品のファンだったらしい。アニメ監督がわざわざ私に教えてくれた。
私の作品はアニメ会社に恵まれ、彼を含めて声優陣にも大変恵まれていて、アニメ化は大成功に終わった。何度も言うが、ここまでが私の幸せの絶頂期だったと思う。
その後は、何とも大変なことになることを当時の私は知る由もなかった。
「アニメ完成、おめでとうございます!乾杯!」
私は、アニメが無事放映されたことを祝うための場に、原作者として呼ばれた。そこにはアニメ会社の皆さんや、出演した声優さん、そのほか、アニメ化に携わってくれた出版社などの人が集まった。居酒屋を貸し切り、大いに盛り上がった。
「浅羽先生、楽しんでいますか?」
普段、お酒をあまり飲まない私は、その場にいる彼らのアニメ化までの苦労や、制作現場での話を聞きながら、ノンアルコールを口にしていた。そんな時、声をかけてきたのが彼だった。
「え、ええ。普段だったら縁のない人たちと話すことができました」
「そうですか。僕もあなたと話すことができて良かったです」
「そういえば、神永さんが私の作品のファンだって聞いたんですけど……」
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