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「そんな、そこまでしてもらっては申し訳ないです」
「僕が話したいから、誘ったんです。ここは、男の僕を立ててくださいよ」
私はお恥ずかしいことながら、これまで生きてきた人生で、男性とお付き合いしたことがなかった。彼氏というものがいたことがない。男性とつき合った経験がない、恋愛偏差値ゼロの干物女に、超有名声優の誘いはまるで甘い蜜、禁断の果実のようだった。頭では、私なんかが相手にされるはずがない。彼の周囲の人間にはいない、面白そうな女性だから、からかっているだけだと、警告を鳴らしていた。
「そこまで言うのなら、おごっていただきます」
しかし、そんな頭の中の警告よりも、禁断の果実をかじりたいという欲求には抗うことができず、私は彼の誘いに応じ、祝賀会の二次会に参加せず、二人きりで飲みなおすことになった。
彼が誘ってくれたのは、こじんまりとしたおしゃれなワインバーだった。私だったら、店に入るのに躊躇するような店だったが、店の中に置かれたたくさんのワイングラスを見て、あることを思い出し、正直に告げた。
「あ、あの、誘ってくれて申し訳ないんですけど、私、実はお酒があまり得意ではなくて」
「ああ、確かに一次会ではあまり飲んでいませんでしたね。ですが、ここのワインはとてもおいしいんですよ。一杯だけでもどうですか?」
私が飲んでいないことを見ていたのか、彼は一杯だけでもどうですかと勧めてきたため、仕方なくおススメを教えてもらい、一杯だけ付き合うことにした。
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