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真っ白な綾元家の壁は、定期的な間隔で防犯カメラなどか設置してあり、高く大きい。
羽菜が入ってはいけないように威圧したが、セキュリティーゲートでは、背の高く、スーツ越しでも筋肉が綺麗についていると分かる門番ケルベロス2匹、いや、そんなケルベロス2人が泉李と一緒に通ると軽く会釈し、あっさり羽菜を通した。
一片50センチほどの白い正方形の石畳が横に4列、縦にはエントランスに続く低い階段の前まで、緩やかに蛇行し続く。綺麗に刈られた芝、そして綺麗に剪定された多くの木々。それを見ながらエントランスの階段を3段あがる。
すると、泉李と羽菜を待っていた使用人の女性が、扉を開けてくれた。
大きな扉は、今日の空の雲に似た、輝くような白だ。
この綾元家の家は、どこまでも夢の世界へ連れて行ってくれるような、大きさと、そして、色があった。
中に入ると、泉李が持っているバッグを差し出すと、それを受け取る別の使用人。
「おかえりなさいませ。お連れのお客様は、どのお部屋にご案内致しましょうか?」
「一番近くの客室でいい。コーヒーと紅茶と、それに緑茶。全てアイスとホットで用意してくれ。100%のアップルとオレンジも。それから、それにあう、お菓子と」
「かしこまりました」
羽菜は一瞬なにを言っているのか分からなかった。
泉李の連れてきた客人は多分自分で、他に誰もいない。
それなのに、今、まるで何人も人が来たかのように、注文をした?
「待って、私飲み物要らないわ、それにお菓子なんて…」
泉李は羽菜を振り返り、唇に弧を描く。
「小神野さん、君はお客だから、何にも気を使わなくていいんだよ。陽はまだ高いけど、夕方だ。少しお腹も減っただろ?」
確かに。
確かにお腹は少し減っている。
少し、ではない。
かなり。
「僕は着替えてくるから、客室に案内してもらって。ゆっくり寛ぐといいよ、話はちゃんとするから」
もしかして、その部屋に、先に案内された彼の友達がいたらどうしよう。
その為の飲み物やお菓子かも知れない。
不安に思ったのは一瞬。
案内された部屋には誰もいなかった。
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