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羽菜も泉李も海に住む金魚ではなかった。
熱帯魚のように、ふわふわと自由に泳いでいる。
それをお互いに感じながら、水槽を眺める。
泉李は羽菜の肩を抱いた。
「ここにくるお客様に喜んで貰えるようにしたいね!」
「あぁ、思い出を沢山作れるようにしないとな。部屋から見える景色や、プールでドリンクを飲みながらゆったりする。あとは、羽菜がたまにイベントやキャンペーンを考えて、より、楽しく過ごせるようにしたい」
羽菜は泉李を見上げた。
「えへへ、それは任せて。お客様が思い出を沢山作れるようなキャンペーンを考えるし、このホテルに来たくなるようなイベントも企画するよ。宣伝部にも協力してもらわなくちゃ。今、本当に仕事が楽しいよ」
「仕事が楽しくなって、僕のことを忘れないでね」
羽菜はケラケラと笑う。
泉李の背中をポンポンと叩いて、更に笑った。
「そんな、忘れるワケないよぉ。私の旦那さんだよ。そして、私の命の恩人」
泉李は少し背を屈めると、羽菜の唇に自分の唇を軽く当てる。
「愛してる」
「…私も。私をいつもいつも助けてくれてありがとう」
「高校生の時に、君を見つけて良かった。まさか、自分がこんなに人を好きになるなんて、思ってなかったくらいだよ」
再び、羽菜の肩を抱く。
「私たちの先祖様たちが、そんな運命になるように助けてくれていたのかも!そう考えると面白いね」
「あぁ、ホントにそうだったのかも」
泉李と羽菜は微笑みあった。
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