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そこにコツコツとヒールの音が響く。
瑠璃だ。
こちらに歩いてくる姿は、いつ見ても美しい。
「羽菜、部屋のテラスを見た?一緒に軽食でもしながら、海をみない?」
瑠璃は羽菜の肩に手をそっと乗せる。
「僕は誘ってくれないんですか?」
泉李は横目で瑠璃を見ると皮肉を言った。
「女同士でお喋りがいいのよ。娘とのお喋りを邪魔しないで頂戴よ。でも、お願いしたら一緒に来ても、いいけど」
瑠璃はフフフと笑う。
「いいですよ、邪魔はしません。羽菜、行ってくる?」
「うん。ありがと!お母さん、軽食は何がある?楽しみだな」
「僕は先に部屋に戻ってるよ、楽しんできて」
羽菜は瑠璃と楽しげに何か話しながら、瑠璃の部屋に向かって行った。
***
ウッドデッキに正方形の大理石のテーブル。
皿には、クラッカーが綺麗に並べてある。
クラッカーの上には、キャビアや、生ハム、クリームチーズにアボカド、綺麗に盛り付けてある。
そして、赤ワインとグラス。
「お母さん、これ写真撮ってもいいかな?」
「勿論いいわよ、SNSに載せるの?」
「うん、宣伝にもなるし、友達みんなも見てくれるから」
羽菜は、テーブルの食べ物と、そこから見える海が背景に入るように写真を撮った。
「お母さんと私の写真も欲しいな」
「私と一緒に?」
「うん、思い出に。これからも、あちこちで一緒に撮りたい」
瑠璃はニコリと微笑みながら頷く。
そして、羽菜は瑠璃の横に並び、腕を伸ばして瑠璃と写真を撮った。
「うわぁ、やっぱり、こんな美人と写真を撮ると自分がすごくブスだぁー」
「何を言っているの、あなたは可愛いわ。ちょっと見せて」
スマホを見せると、瑠璃が肩を上げる。
「若さってすごいわね。横に並ぶとこんなに私の肌が弛んでいるのが分かるなんて。もう一回撮り直して」
「私も撮り直したい」
再びカメラをかまえ、2人は笑顔を作る。
が、結局5回ほど取り直して、2人はとりあえず満足した。
SNSでテラスの風景の写真と、羽菜と瑠璃が笑顔で撮った写真を載せる。
「さ、お母さん、ワイン注ごうか?」
「ありがとう」
羽菜はグラスにワインを注ぐ。そして、自分のグラスにも。
「あら、私が羽菜のグラスに注ごうと思ったのに」
「お母さんは座ってて。今日は記念パーティーで疲れたでしょう?沢山の人とお喋りしたり、色んなお部屋紹介したりして、バタバタしてたし。今日はゆっくり休んで。明日も、一足先にお母さんだけ帰るんでしょ?その後も出張って、またしばらく会えないし。体には気をつけてね」
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