32人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
小神野羽菜。
この春に、前田高校の2年生になった。
特別頭が良いと言う訳ではなかったが、至って真面目に勉強をし、女子の友達と遊び、その中でも特別仲の良い橋本優香と同じハンバーガー屋でバイトをしていた。
優香は、バイト代を全て自分のお小遣いとして使っていたのだが、羽菜は違った。
バイトの7割を家計の足しにしていた。
羽菜の父は、羽菜が物心ついた時にはすでにいなかった。
母の舞子が言うには、会社に行くと出て行ったっきり戻ってこなかったらしい。
舞子は朝から晩までスーパーでパートをし、羽菜を育ててきた。
今まで頑張ってきた舞子を、高校生になった自分もバイトをして、家計を助ける事ができる羽菜は嬉しく思っていた。
と、言っても、高校生。
学校に行きながらのバイトの1ヶ月の給料はそこまで高くない。
微々たるものだったが、それでも、羽菜は母の舞子が喜ぶ姿が見たかった。
そんな慎ましくも幸せそうな1つの家庭。
==
綾元泉李。
彼も高校2年生。
地元では有名なお金持ちの子供たちが行く私立の徳原学園に通っている。
この徳原学園に来る子供たちは、皆、金持ちの親を持つ、良家の御子息、御令嬢の集まりなのだが、泉李はその中でも学校で1位2位を争うほどの金持ちの息子だ。
父が有名なホテルや高級旅館をいくつも経営し、不動産も手掛けていて、彼の家も、まるでホテルなのかと勘違いする程、城のような大きな屋敷だった。
最初のコメントを投稿しよう!