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小神野家はすぐに見つかった。
元々はそこそこ大きな会社を経営し、小神野という少し珍しい漢字で書く苗字。そして、曽祖父たちと仲良くしていた、といくつもヒントがあるので、調べれば早く見つかった。
自宅の蔵からも、曽祖父の遺言状を見つけ、泉李は携帯電話で写真を何枚か撮った。
しかし、小神野の会社は潰れた上に、祖父母の代では交流が徐々に少なくなり、現在、小神野の名を継ぐ男は行方不明。
その妻と子は、ひっそりとどこかで暮らしているワケだから、今、住んでいる場所は興信所でも使わないと分からない。
泉李は眼鏡の端を中指で上げた。
一体どこにいるのやら。
許嫁、別にさほど興味はなかった。
しかし、先祖が託したその約束には興味がある。
そして、自分に分からないモノがあるというのが気に食わない。
何事でも最後まで調べてやるいう泉李の性格だ。
それに火がついた。
が、その「調べてやる」はアッサリと終わった。
下校途中に、小神野と書いたネームタグをつけたハンバーガー屋の店員から割引クーポンを貰ったからだ。
「期間限定のバーガーがです。クーポンを使うと100円割引になりますよ」
確実に彼女が、泉李の先祖と関係があるのか不明だが、おそらく、そうだ。
勘というやつだ。
泉李の友達には、安井北斗という友達がいる。
徳原学園に通う歯科医の息子で、明るくあまり物怖じせず、ボソボソと話す泉李とは違い、大声でガハハと笑う豪快な性格だ。
北斗は黙っていればイケメンなのに。
そんな風に残念がる女子もいたが、モテないワケでもない。
彼の周りには男女問わず沢山友達がいたが、北斗は泉李と一緒にいる事が多かった。
徳原幼稚園からの付き合いだ。
泉李は好んで、ハンバーガーを食べなかったけれど、北斗はファーストフードが大好きだ。
友達の付き合いという事で泉李もたまにポテトをつまむぐらいはあったけれど、美味しそうには食べない。
少し濃いめの味つけが好きではないのだ。
小神野羽菜は、泉李と北斗に1枚ずつクーポンを配ってから、また次に歩いてくる通行人の方へ歩いて行った。
「北斗、ハンバーガーを食べるぞ」
「え!?お前から誘うなんて珍しい」
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