プロローグ

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プロローグ

首都ノルデンから電車を乗り継ぐこと3時間半。  駅のホームに降り立つと、爽やかな風が吹き抜けた。他にも数人の客が降りており、各々が改札口に向かっている。  線路の向こう側には、湖と呼ぶには少しばかり小さな池があり、その奥には緑に覆われた山々がそびえる。自然豊かなこの国を象徴する風景だった。  辿り着いたのは、ここメレン共和国の西部に位置する街、トルーデン。これといった産業があるわけではなく、観光客が訪れる程度の、よくある田舎街だ。  取材のために朝8時には出発したのに、既に時刻は昼に近い。出張代が出ないからと交通費をケチったのは失敗だったかもしれない。鈍行に乗り続けていたせいで、まだ目的地に着いてすらいないというのにくたくただった。  帰りは、素直に特急か飛行機を使った方がよさそうだ。  駅前には広場があるが、数人の観光客と地元の人々の姿がまばらに見られるだけで閑散としている。この辺りは戦争の被害を受けなかったようで、数百年前から残っていそうな古風な建物も見られた。 「さてと」  ポケットから地図を取り出し、目的地を確認する。ここから歩いて30分ぐらいだろうか。おそらく、目的地周辺に飲食店はない。時間的にはやや早い気もするが、お腹も空いてきたし、ここらで昼食を済ませてから行った方が良いだろう。  幸いにも今日は天気が良いし、ちょうど良い腹ごなしにもなる。
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