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俺は全てを話そうと思った。
妹の事、手袋の事、自分の気持ち。
警察から解放され再び二人っきりになって、俺は小嶋にゆっくりと全てを話した。
俺の心は不思議と凪いでいた。
こんな風に気持ちが落ち着いているのは、桃が亡くなってから初めてだった。
小嶋は時々頷いたりしながら最後まで黙って聞いてくれた。
最後まで聞き終わると小嶋は申し訳なさそうな顔をして謝った。
「ごめんな。秋山の気持ちぜんぜんわかってなかった。俺たち両想いのはずなのにどうして誤魔化すんだろうって、自分の事ばっかりだった。俺の言葉が余計こじらせちゃったんだな」
申し訳なさそうに肩を落とす小嶋。
俺はぶんぶんと勢いよく首を振った。
「俺もさ、今日ちゃんと言おうと思ってたんだ。これ……」
そう言うと小嶋はコートのポケットから小さな箱を出した。
ぐしゃりと潰れている。
「あぁ……」
箱を開けると周りは割れて粉々になっていたが3㎝ほどの小さなガラスの靴は綺麗なまま入っていた。
「これ……」
「俺、あの日の記憶あるんだ。最初から最後までちゃんとある。ホテルに連れて行ったのも俺だし、そこで告白して秋山も俺の事好きって言ってくれたんだ。俺たち拗れてしまったけど、この『ガラスの靴』を渡して秋山が俺のシンデレラだって伝えたかった」
俺は胸が熱くなって、思わず小嶋にキスをしていた。
悲しくてじゃなくて嬉しくて涙が零れた。
「好き…。小嶋が好き…。俺の、俺だけの王子様に、なって?」
「俺も好きだよ。俺だけのシンデレラ…」
再び重なり合う二人の唇。
二人を結び付けた片方だけの手袋の忘れ物。
二人を結び付けたのは魔法使いではなかったけれど、妹の想いだったのかもしれない。
王子様とシンデレラは最後には結ばれて幸せにならないとね。
-終-
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