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この手袋は誰の物?
俺はどうやって自分の家に帰ったのかまったく覚えていなかった。
その後も悲しい気持ちが大きくなり、落ち込むばかりだった。
週末はそんな感じで手袋をどうやったら取り戻せるか考えようとしたが、なかなかいい案が浮かばないまま月曜日を迎えてしまった。
昼休みに小嶋に呼び出され休憩室に来ていた。
相手が俺だったって思い出したのかも、と緊張したがそうではなかった。
「秋山、悪いんだけどれいの子探すの手伝ってくれないか?」
「え?あ、うん…俺でよければ…」
「問題はどうやって探すかだよなー。まさかこの手袋の持ち主とラブホに泊まったんだけど覚えてなくて、持ち主は誰ですか?って言うのはまずいよな?」
「そりゃなー相手は女の子なんだろう?そういうの表だって言う事じゃないから。ラブホの部分は伏せるべきだろうな」
俺ちゃんと普通の顔してるかな。
妹が亡くなっていつまでも悲しんでいる俺を心配する両親が見ていられなくて表情を偽る事を覚えた。
ポケットに入れてきた片方の手袋をぎゅっと握った。
大丈夫。俺はいつも通りだ。
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