うんめい。

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うんめい。

「彼氏が欲しい!」  デデン!と机に膝をつき、私は重苦しく告げた。ざわざわしている朝の教室。私の話を聞いているのは精々、前の席に座っている友人の奈穂子(なおこ)くらいなものだ。 「サナちゃんどうしたの、急に。目が完全に据わってますけど?」  クラスで一番仲良しの少女は、呆れたように私を見て言った。 「受験に疲れて頭沸いちゃった?まあしょうがないよね、あたしと違ってサナちゃんは第一志望の大学絶望的な判定出ちゃったもんね。大人しく滑り止め行きましょう的な」 「まだ受けてもいないのに悲しいこと言わないでくれる!?まったくもってその通りだけどさ!私は頭も悪けりゃ運動神経も悪いし、それでいて高望みして国立受けて自爆しようとしてるあたりアホだと思いますけどもね!!」 「声でかいってば。そこまでは言ってないでしょ、そこまでは。心の中で思ってるけど」 「うわーん最後の一言が余計ー!!」  しくしくと派手な泣き真似をする私を、しかし友人は慰めてくれる様子もない。しらーっとした顔で私を見下ろし、やがて何かに気づいたように“あ”と声を上げた。 「わかった。……さてはリナちゃんに彼氏ができたな?よりもよってこのタイミングで」 「うううううう!」  やはり、奈穂子には全てお見通しであったらしい。私は思い出して机の下で足をバタつかせるしかない。  私達より偏差値の高い高校に行った、私の双子の姉のリナ。同じ顔をしているくせに、頭の出来もいいし要領もいいしでまるっきり中身が似ていないのだ。私は昔から、何をやってもリナに勝つことができなかった。だからせめて彼氏くらいは先にゲットしてやる!と息巻いていたのだが。  残念ながら、そんな野望も儚く散ってしまったわけで。  つい昨日、リナに素晴らしい笑顔でスマートフォンの画面を見せられたのだ。そこに写っていたのは、リナと笑顔で肩を組む少年の姿で。
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