伝説の聖女なのにダンジョンで毎日迷子になって困ってます!~超方向音痴な聖女はダンジョン内でお助けキャラとなって無双中~

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伝説の聖女なのにダンジョンで毎日迷子になって困ってます!~超方向音痴な聖女はダンジョン内でお助けキャラとなって無双中~

◇◇◇ 「う、こ、こんなところで危険度Aランクのオーガに出会うとはっ!」 「リック!あなただけでも逃げて!私のこの足じゃもう……」 「馬鹿なこと言うな!アイラを見捨てられるわけねーだろ。俺、ずっと、ずっと、お前のことが好きだったんだよ!」 「リック……最後にその言葉がきけて、嬉しかった……」  ◇◇◇  ダンジョンからの恵みによって栄えているノイエ王国には、大小様々なダンジョンが存在している。ダンジョンはある日いきなりランダムに発生し、踏破されるまでその内部にモンスターを生み出し続ける恐ろしい場所だ。知らずに足を踏み入れたものは、途端に命を失ってしまう。  一方で、モンスターを討伐した後に現れる魔石や、モンスター達のドロップアイテムなど、ダンジョンが生み出す宝物は冒険者達を魅了し、ダンジョン資源として国を潤している。  ここは『深遠のダンジョン』。三年前王都の近くに突如発生したダンジョンだ。まだ誰一人踏破したことがない難攻不落のダンジョンであり、現在異世界から召還された勇者パーティーが踏破を目指しているダンジョンとしても注目を集めている。  ダンジョンは、地下に降りるほど攻略難易度が高くなる傾向にあるため、低層階は、生活のために潜る三流冒険者や駆け出し冒険者も数多く挑戦している。しかし、決して油断してはならない。なぜなら、突如として格上のモンスターが現れ、無慈悲に命を刈り取っていくこともあるのだから。今もまた、二人の若い冒険者が命を散らそうとしていた……とそこに、 「あのぉー」  深刻な場面に相応しくない何とも間の抜けた声が響く。 「あの、その、ちょっとすみません?」  声の主は、必死に若い冒険者達に話しかけているのだが、 「リック……」 「アイラ……」  見つめ合い、二人の世界に入っている二人には、第三者の声など川のせせらぎくらいにしか感じられないのだ。 「あのう!ちょっと!ちょっといいですか?」  空気の読めない声はなおも大声で叫び続けている。いい雰囲気が台無しである。 「もう、モンスター倒しましたけど!!!」  その声に二人はようやく振り向くと、先程まで二人を絶望させていたAランクモンスターが跡形もなく消滅していることに気がつき、ポカンと口を開ける。そこに立っていたのは豪華だけどなぜか薄汚れてボロボロになった白いローブ、そこらへんに落ちている枯れ木を持ったみすぼらしい小さな少女で…… 「彼女さん、足を怪我してるんでしょう?今治しますから!」  そう言うと瞬く間に回復魔法で足を完治させてしまった。 「嘘……私の足、オーガに食べられたのに、なんで元通りになるの……」  アイラと呼ばれていた冒険者の少女が信じられないといった表情で呟くと、 「だってわたくし、聖女ですからっ!」  と、ドヤ顔を決めている。 「聖女……えっ!もしかして異世界からこられた伝説の勇者様と一緒にダンジョン踏破を行っているあの、聖女様ですか?」 「はいっ!まごうことなき本物の聖女ですわっ!」 「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!ああ!アイラ!本当に良かった……神に、神に感謝を!」 「まぁ、聖女として当然の勤めですわっ!」 「ああ、聖女様、なんとお礼をいっていいか。私、もう二度とこのダンジョンから抜け出せないと諦めていました」 「良かったですわね!ところでそのう、お願いがあるのですけど」 「はい!なんでもおっしゃってください!」 「もちろんです!私たちにできることならなんでも!」 「実は迷子になってしまって。勇者様たちとはぐれてしまったんですの」 「えっ……」 「勇者様たちを見かけませんでしたか?」 「えっ、えーと、残念ながら勇者様たちは見かけてません。ここはそのう、低層階なので。多分、勇者様たちはかなり深層におられるかと……」 「何ですって!いつの間に階段を上がってしまったのかしら……あ、そうだ、これ、オーガの魔石ですわ。よろしかったらどうぞ?」 「えっ!そんな、このような高価なもの、頂くわけには…」 「沢山あるから、かまいませんのよ。最初は全部拾ってたんですけど、持ち歩いていると重たくて。しょうがないから巾着に入らない分は捨ててましたの。なんなら、少し持って行って下さる?」  そう言って腰に提げている巾着を開くと、驚くほど沢山の魔石が詰まっていた。 「えっ?えっ!これ、だって、ほとんど高ランクの魔物の魔石みたいですよ?これだけあれば、一生遊んで暮らせるんじゃあ」 「ああ、じゃあもう全部お二人に差し上げますわ!彼女さんは怖い思いをしたから、もう、ダンジョンなんて潜りたくないでしょう?そのかわり、といってはなんですけど、水や食料なんかを譲って頂けないかしら?そうしましょう!ねっ?さぁ、はやく食料をすべておいて、お家に帰ると宜しいわ!」 「は、はいっ!本当に、本当に、ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!」 「私もです!絶対に絶対に忘れません!」  何度も何度も振り返っては頭を下げてダンジョンから立ち去る二人を見つめ、聖女は思った。 (魔石、重たくて困ってたから助かりましたわ……それに、これでしばらくは食いつなげますわ)  そして、相変わらす迷子のままであることに気がついて溜め息をついた。 「はぁ、勇者様、どこにおられるのかしら。もう1カ月もお会いできていませんわ……」  ◇◇◇  ――――その頃勇者一行は…… 「うわぁぁぁー!魔物だっ!に、にげろ!」 「ぎゃぁぁぁ!腕、火傷したぁぁぁ!」 「聖女は!聖女様はどこにいったんだぁー!」 「怪我、怪我を治してくださぁーーーーい!」  結構低層階でウロウロしていた。早く最強聖女と合流できるのを祈るばかりである。
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