*不思議な家

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*** 食事を終えてから数時間後。 リョウは閉じていた目をぱちりと開いた。 横になりながらもずっと耳をそば立てていたが、足音や生活音といった気配が複数に重なることは一度もなかった。 きっとここに住んでいるのはセオとルイだけなのだ。 「今のうちに何か手を打っておかないと……」 足を引きずりながらステンレスの扉に近づく。 慎重にドアノブを回すと、リョウは初めて一人で部屋を抜け出した。 「さて、セオのことを調べなきゃ」 リョウに悪びれる素振りはない。 それどころかいつも無邪気な瞳には狡猾な光さえ浮かんでいた。 暗い廊下をヒタヒタと進みながらセオのことを思う。 一見ぶっきらぼうで冷たく見えるが、あの面倒見の良さは人の良さの表れだ。 そして優しい人ほどつけ入る隙がある。 相手に悟られず急所を押さえるやり方は、幼い頃からアイト直々に仕込んでもらったリョウの得意技、……いや、生き抜く(すべ)だ。 大好きだった兄の顔が浮かぶとリョウから表情が消える。 「アイ兄……」 自分の落とした声にハッと意識が引き戻される。 リョウは頭をぶんぶん振ると奥へと進んだ。
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