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*セオの光
リョウたちは遺跡まで戻り、東ルートへと入る。
新都軍と距離ができたところでセオは速度を落とし、ががみがみとリョウに怒っていた。
「全く、無鉄砲にも程がある!その周りがすぐ見えなくなる癖なんとかしろっ」
「ご、ごめん」
「次勝手に離れたらお前だけ置いていくからな」
「……はい」
完全に自分に非があるだけに、リョウはバンビの背中に隠れながら縮こまった。
「バンビ。とりあえずこのまま南下するが方向はお前が直接指示しろ」
「分かった。どれくらいかかりそう?」
「最南端となればここからでも最低三日はかかる。天候や砂嵐次第では倍かかる可能性もあるがな」
「そっか……」
バンビは焦りを無理矢理飲み込み、ぎゅっとセオの服を握りしめた。
「できるだけ最速でお願い」
「連続移動は体にかなり負担がかかるぞ」
「分かってる」
直接新都軍を目の当たりにしたバンビはかなり思い詰めている。
セオは悪化していく事態に頭が痛い思いであったが、腹を決めるとぐっと前を見据え加速をかけた。
一、二時間はバンビもリョウも高速運転に耐えていたが、それ以降はセオの言う通り体への負担が半端ではなかった。
風を受け続けた肌は乾燥に痛み、振動に晒され続けた全身は強張り痺れている。
真っ赤に燃える夕日が地に沈む頃には、バンビもリョウも一歩も動けないほどへろへろになっていた。
「うぅ……思った以上にきつい。バンビちゃん大丈夫?」
「おぇぇ、まだ足元が揺れるぅ。せめて自分で運転できたらなぁ」
一番負担が大きかったはずのセオだけは一人さっさと見回りに動き、地形と安全性を確かめてから戻ってきた。
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