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「セオぉ、バンビちゃん、早く食べようよ!おれお腹減ってたまんないよぉ!もうこれ全部開けちゃう?!いっちゃう?!」
「ちょっ、ちょっと待ってよリョウ!全部飲み食いしちゃだめよ?ちゃんと三日分に分けておかないと……」
「いただきまーす」
バンビの制止などお構いなくリョウは片っ端から手をつけ始める。
歓喜の声や悲鳴や説教を織り交ぜた食卓は大変騒がしいものとなった。
腹が満たされると疲労の溜まった体は一気に機能低下し、もはや眠気との戦いとなる。
セオとリョウは梯子を上り天井裏で、バンビは下のソファで休む運びとなった。
「じゃあねバンビちゃん。おやすみ」
「ふぁーい、おやすみぃ」
バンビもあくびを噛み殺しながら気怠げに手を振る。
些細な疑問は押しやり、休息を求める体に従いぐっすりと眠りに落ちた。
一方でセオは今更ながらリョウがどうやってバンビを説得したのか気になっていた。
今にも寝落ちしそうなリョウの隣にどさりと腰を下ろす。
「リョウ、お前バンビに俺のことを何て説明したんだ?」
「ほぇ?」
リョウは目をこすりながら大あくびをした。
「おれの、お世話がかり」
「バンビはお前を保護すると言っていた。それはどういうことなんだ?」
「別にいいじゃん……。おれはただ、セオも狙われないようにって……」
リョウの瞼はとろりと落ち、体が小さく丸まる。
「おれは何もできないけど……、おれだって、……セオを、まもり……たい……」
言葉が途切れると寝息が聞こえてくる。
一人残されたセオはしばらく難しい顔をしていたが、立ち上がるとブランケットをリョウにかけてやった。
「守りたい、か……」
ぼんやりとした呟きはどこか空虚な響きを含んでいる。
リョウの隣に転がったセオは複雑な思いで目を閉じた。
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