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*バンビの不覚
その日は朝からやや風が乱れていた。
南部まで来れば地形も異なり、気候や自然も多少は変化するものだ。
それでもシェルターから外に出たセオは、空を見るなり迷いなく断言した。
「大陸からの風が強い。そう遠くない所で砂嵐にぶつかるだろうな」
「砂嵐ですって?」
基地への方向を見定めていたバンビが警戒を強める。
砂嵐自体も確かに厄介だが、南部ではそれに伴い危険な現象が発生しやすいのだ。
懸念した矢先に鼓膜が地響きに震えた。
「砂獣!!近づいてるわ!!」
なだらかな砂地が噴き上がると、樽のように巨大なサソリが群れを成して現れた。
リョウは突然の事態に青ざめ後ずさった。
「な、何あれ!?ちょっとでっかすぎない!?」
「それが砂獣ってもんよ!!砂嵐を避ける為に砂獣が一斉に動き出してるんだわ!!」
生き物を襲う習性のある砂獣は、リョウたちに反応すると進路を狙い定めてきた。
バンビはあっという間に目の前まで迫る群れに自ら飛び出した。
「バンビちゃん!!」
「バンビ、待て!!」
シェルターの代わりにバイクを取り出していたセオは彼女の大胆な行動にひやりとした。
「リョウ、お前はそこを動くなよ!」
グリップをリョウに押し付けバンビを追う。
すでに攻撃態勢を見せていた先頭の砂サソリはバンビに襲いかかっていた。
「やあ!!」
バンビは手にした短剣でサソリの尾を弾くと、側面から思いきり蹴りを入れた。
正確な打撃はサソリを砂に叩きつけたが、大したダメージは与えていない。
すぐに体勢を整えると再びバンビに尾を振り上げた。
「下がれ!!」
バンビを追い越したセオが引き抜いた長剣で砂サソリを真っ二つに斬り落とす。
返す刃で両サイドから襲いかかる三匹の砂サソリも斬り捨てた。
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