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周りの安全を確認したリョウはバイクから飛び降り、大きく息を吐いた。
「はあぁぁ、朝一からびっくりしたね。おれあんなの初めて。セオって強いんだなぁ」
「大型の砂獣じゃなかっただけまだマシだな。リョウ、あまりウロウロするなよ」
「はぁい」
セオは水の入ったボトルを取り出すとバンビに渡した。
「怪我はないか」
「え、……ええ」
バンビは大人しく受け取ったが、ボトルを握りしめた手がまだ震えている。
セオは呆れて言った。
「恐いなら先陣切って飛び出すな」
「し、仕方ないじゃない。砂漠では判断に迷うほど仲間が死ぬのよ。それに私だってちゃんとした武器さえあればもっと戦えたわ!」
「お前、とんでもないじゃじゃ馬だな」
「何よ!!悪い!?」
バンビはムキになったが、セオの鮮やかな青い瞳が怒りを絡め取る。
「バンビ」
「だ、だから、誰がバンビよっ」
「次から俺といる時は先に飛び出すな。お前、一応女なんだぞ」
「……一応ってのはいらないんじゃない?」
思わず突っ込むとセオの眼差しが微かに綻んだ。
初めて見る柔らかな表情に、バンビの胸が不覚にもどきりと音を立てる。
セオの端正な顔立ちに今更ながらドギマギとしてしまい、動揺に目が泳いだ。
「な、なん、何なのよあいつ」
リョウに水を渡しに行く逞しい背中を横目に、バンビは熱くなった頬をぴたぴたと手で冷ました。
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