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すっかり眠り込んでいたリョウはマットから頭が落ちる衝撃で目が覚めた。
「……いったぁ」
手は寝床をさすり、無意識に時間を確認しようとする。
だが指先が捕まえたのは硬い時計ではなく柔らかな毛並みだった。
「んー……ルイ?おいでぇ」
ぬくぬくした小さな体を抱き寄せ二度寝の体勢に入る。
その三秒後に脳が急速に目覚めた。
「いや今何時!?遅刻!?やっば!!」
驚いたルイが先に部屋を飛び出して行く。
リョウも慌てて後を追ったが、シンとしたリビングを目の当たりにしてやっと寝ぼけたことに気づいた。
「あ、おれ家出したんだった」
ぽりぽりと頬をかきながら誰もいないリビングを見回す。
「セオはどこだろう。喉乾いちゃったな」
セオの部屋も覗いたがベッドも空っぽだ。
「セオぉ?」
呼びかけても返事はない。
リョウはリビングに戻るとキッチンへ入った。
いくら何でも水道水の一杯くらい頂戴しても文句は言われないだろう。
洗いざらしのグラスを拝借し、蛇口に手を伸ばす。
「あれ?ちょっと待てよ?この蛇口どこにもハンドルもレバーもないぞ」
これではどこを捻れば水が出るのかが分からない。
蛇口のそばにあるのは白く四角い手のひらサイズの石だけだ。
「んん?どういう事だろう?」
リョウはひとまずグラスを置くと、何とか水が出せないかとあちこち触り始めた。
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