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プロローグ
黄金の月が禍々しく満ちる時
蒼き破滅は時を超えて現れる
それは全てを無に帰す
虚無なる砂漠の王也
人生きる者たちよ
王を起こしてはならぬ
その姿を目にする者は
自ずと命を捧げる贄となる
人生きる者たちよ
歴史の歪みに刮目せよ
過ちは……
「過ちは繰り返すべからず」
「その通りだ」
四番目の兄は暗唱を終えた末の弟の襟首を掴み、猫のように吊り下げた。
「で、こんな月明かりの眩しい夜中に、砂漠にしか続かない道に出て、本気でそんなものを探すつもりだったのか?リョウ」
「うん、だって見たいもん。砂漠の王さま」
相変わらず小柄で幼い弟に、兄の手からがっくりと力が抜ける。
「夜の砂漠へ踏み込めばどうなるか分かってるのか?砂狼に襲われたら怪我じゃ済まないんだぞ!」
本気で怒られているにも関わらず、リョウは嬉しそうに兄の首に巻きついた。
「アイ兄だけだね。おれのことちゃんと見てくれてるのって」
月明かりを受けてリョウの柔らかい黄白色の髪がふわふわと揺れる。
兄はため息混じりに小さな弟を抱え直し、元来た道をゆっくりと歩いた。
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