*セオとリョウ

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*セオとリョウ

リョウはひんやりとした感触で目を覚ました。 夢から覚めたばかりの(まぶた)が、見慣れぬ天井を見ながら瞬く。 「アイ兄?」 声にしてすぐに気付く。 アイトが生きていたのは、二年前までだということに。 勝手に濡れていた目尻をぬぐい体を起こすと、酷い目眩に襲われた。 「うぅ、気持ち悪い。おれ何してたんだっけ?」 冷たいタオルがおでこからハラリと落ちる。 小作りな部屋を見回していると、ステンレスの扉がキィと音を立てて開いた。 「よぉ、やっと目が覚めたのか」 「……だれ?」 近づいてきたのは見惚れるほど精悍(せいかん)な顔つきをした青年だった。 浅黒い肌にはしなやかな張りがあり、背は高く、物腰は非常に落ち着いている。 だが大人というにはやや若い。 肩で一つに縛られた髪は豊かに黒く、星を乗せたような艶が散っている。 何よりも、青く深い砂漠の空を閉じ込めたような鮮やかな瞳子が、青年を美しく印象付けていた。 「砂漠の、王さま?」 青年がどこか浮世離れして見えたせいか、それとも自分があんな夢を見ていたせいか、脳みそが働く前にリョウの唇が勝手に動いた。 青年が不審気に問い返す。 「何だ?」 「あ、いや、なんでもない。それよりここはどこ?」 「お前何も覚えてないのか?」 ベッドのそばに立つ丸いテーブルに木箱が置かれる。 青年の手がパカリと蓋を開けば、薬品の匂いが鼻先を掠めた。 「見せろ」 「何を?」 「左足首だ」 リョウは小首を傾げたが、素直に掛け布団から足を引っこ抜いた。
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