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突然大いに嘆き出すリョウ。
予想外すぎる反応に、包帯を巻き直していた青年が焦りを見せた。
「おい……」
「足も痛いし動けないよおお!!どーしよおお!!」
小柄であり、時に女の子と見間違われるほど華奢なリョウはこれでも今年で十四歳。
嘆きかたは幼くも流れる涙はどこか迫真めいている。
青年は急いで包帯を巻き終えると医療用テープでぐっと固定した。
「分かった、分かったから!まだ混乱してるだけだろうから落ち着くまでは待ってやる」
「え、いいの?」
ぱっと見上げた顔に今の涙はどこへやら。
ついさっきまで喚いていた口元が形よくにこりと笑った。
あまりの豹変ぶりに青年がたじろいでいると、リョウは前言撤回される前に食い気味に言った。
「おれ、リョウ。おにーさん、何ていうの?」
「オニーサン……」
「うん。名前、何ていうの?」
純真さを込めてきらきら輝くリョウの瞳。
一歩も引く気のない無邪気な笑顔に、黙り込んでいた青年はついに折れた。
「……セオ」
「セオ?うん、よろしくセオ!」
セオが差し出された手を見下ろしていると、痺れを切らせたリョウが両手で握りしめる。
「よろしくくらいしてよ。しばらく一緒に暮らすんだから」
「はぁ!?」
リョウは眩しい笑顔を向けたまま元気良くセオと握手を……ほぼ無理やり交わした。
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