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「え!?これ全部セオが作ったの!?料理上手すぎない!?」
「いいから黙って食え」
セオは勢いよくがっつくリョウを抑えつつ、世話に慣れた手で猫の皿に缶詰フードを入れてやった。
「おいお前」
「リョウだよ。ちゃんと名前で呼んでよ」
「……リョウ」
リョウは満面の笑みで「なに?」と聞き返してきたが、期待に満ちた眼差しはどうも直視し辛い。
「それだけ食欲があるなら十分だろ。明日には外に出て……」
「あ!!そういえばさぁ、この猫って名前あるの?猫ってこんなに可愛いんだね。ねぇ名前は?」
セオの言葉をねじ伏せるようにリョウがねだった声を上げる。
ねぇねぇと懐かれるのも鬱陶しく、セオは仕方なく答えた。
「ルイだ」
「ルイかぁ。お洒落だね。絶対にセオがつけた名前じゃないでしょ」
「うるさい」
セオは食べ散らかしたルイの顔を丁寧にナプキンでぬぐっている。
リョウはその様子を眺めながら空っぽになったお皿を重ねた。
「ごちそうさまでした!セオってさ、優しいよね」
満足そうに大きく伸びてそのままベッドに横になる。
ほどなくしてすぅすぅと幸せそうな寝息が場を満たした。
「おい……」
セオが呼びかけてももはや返事はない。
ルイはリョウの隣にピョンと飛び乗り、寝息のそばで丸くなった。
一人残されたセオはやれやれと肩をすくめ、役目を終えた食器をかき集めた。
「まぁ、もうしばらくは仕方ないか」
綺麗になった丸いテーブルには諦めたような声だけ残され、部屋の扉は静かに閉められた。
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