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「そっか、頑張れよ。俺なんかに言われてもなんだけどさ」
「ありがとう、大和。頑張るよ」
お互いに照れ臭さがあるためか、大和も真司もぎこちない笑みを浮かべていた。
「あと、怪我には気を付けろよ。あの投げ方だと、体に負担がかかりやすそうだしさ」
「だよなぁ。なるべく負担がかからんように下半身の筋トレには力入れとるんじゃけど」
「筋トレだけじゃなくて、柔軟もしっかりやれよ。アンダースローなら、特に股関節に負担がかかるだろ。柔軟性がないと、変なところで怪我しやすいからさ。それから、プロを目指してるなら、球数のことも考えた方が良いぞ。肩も肘も消耗品なんだからさ」
そこまで話して大和は口をつむぐ。つい、野球のことを話し出すと昔から止まらなくなるのだ。
黙り込んだ大和を真司は急にまじめな顔をして見つめた。
「野球、本当にやらんの? 手術はしたんじゃろ? 最近は手術してちゃんとリハビリをすれば、ほとんどの人が元通りになるって聞いとるよ」
「またその話かぁ……。怪我したうえに一年もさぼってたやつ、今更って感じだろ? ていうか、お前、ホントに俺のことが嫌いなわけ?」
ごまかすように大和は冗談を飛ばす。
「嫌いな奴ほど気になるもんじゃけぇね。一年のブランクなんて誤差、不動のエースの大西大和様には関係ないじゃろ。ラーメン同好会を辞めたくないなら、二つ一緒に楽しめばいいんよ」
まるで友達のように真司は接してくれる。彼の優しさに大和はなにも言えなくなった。
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