1、ようこそ、ラーメン同好会へ!

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1、ようこそ、ラーメン同好会へ!

 夏の匂いをはらんだ潮風が、生徒たちの賑やかな話し声と共に校舎を駆け抜ける。尾道(おのみち)梓弓(あずさゆみ)高校は、夏休みを目前に浮足立った空気に包まれていた。 「……今年で発足七年目となる野球部は、選抜高校野球大会で準優勝に輝き、現在は初の夏の甲子園出場を目指して頑張っています。皆さんも一緒に野球部を応援しましょう」  女子生徒の声が放送室から校舎全体に流れていく。  昼休み、生徒たちは教室や食堂で食事をしながら校内放送を聞いていた。 「さて、次はテニス部からのお知ら――」  当たり障りのない進行を続けていた放送部員が、次のちょっとした部活紹介に入ろうとした時だ。 「……ちょ、ちょっと、なにするの!」  キーンというハウリングがスピーカーから校舎全体に流れた。  背後からマイクを奪い取られた女子生徒が振り向く。突然現れた侵入者は長身でガタイも良い男子生徒だった。 「アンタ誰なんよ! ()よ放しんさい!」  キャスター付きの椅子に座った女子生徒が男子生徒を足蹴にする。彼女の反撃にひるみながらも、男子生徒はマイクを放さない。  もめている間、ガタガタともみ合う音だけがマイクを通して流れていた。マイクの取り合いはしばらく続く。 「ごめんな、ちょっとだけ貸してくれよ」  男子生徒は女子生徒の座る椅子を押して彼女を壁際まで遠ざけた。
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