妖狐の兄妹

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「いいか、どんな妖怪も性格は自己中心的で傲慢(ごうまん)なヤツらだ。人間みたいに心を(かよ)わせられる存在ではない」 「そんなの関わってみないと分からないよ」 「ツチコロビはコハルの都合なんて何も考えていないんだよ。ただ、自分のため、退屈しのぎのためにお前を呼んだ。たとえ、途中でコハルが疲れようが泣こうが、手を止めずに引きずってでも遊びに付き合わせようとするだろうね。もし、僕が来なかったら森の奥まで連れてかれて二度と里には帰すことをしなかっただろう。妖怪の住処に連れて行かれたら僕や親父だって探し出すことは難しい」  兄の言葉を聞いてコハルはゾッとした。  今更、思い出した。  大人が子どもに言い聞かせるものの中には『妖怪の言葉には耳を貸すな』というものがあった。  妖怪はあの手この手で人間の子どもを誘拐しようとする。  彼らにとって、怯える子どもは食べられる最高のご馳走である。  ツチコロビも遊ぶことに飽きてしまったらコハルを食べようとしたであろう。 「コハル、帰るぞ」 「…うん」  帰り道はずっと無言であった。
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