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それから、ふたりは人里に到着して、屋敷に戻るため橋を渡っていた。
さっきまで、森の中にいたせいか、夜に浮かぶ地球の光が最初に通って来たよりも眩く感じて橋が鮮明に見えた。
コハルは無事に帰ってこれたことに安堵した。
目の前にはコンタの背中がある。
その背中はとても広く温かみを感じさせた。
突然、コンタは橋の真ん中で止まってコハルの方に振り向いた。そして、手を伸ばして彼女の顔に触れようとした。
そして、兄の手が優しく妹の頬を擦ったのであった。
地球の光に照らされている兄の顔は微笑んでいた。
「見事に泥だらけだな。こりゃ、親父の目を誤魔化すことはできそうにない」
「私、父ちゃんに怒られるの?」
「そう怯えるな。僕も一緒に叱られてやるから。なんなら、全部、僕のせいにしてもいい」
コンタは分かっていた。
大方、自分が夜遅くに外に出るところを妹に見られていた。そして、兄の後を追ってみたら妖怪に出会ってしまった。
ならば、コンタがコハルを怖い目に合わせたと言ってもおかしくない。
そのように父親のショウジに伝えれば多少は妹の説教を短くできるかもしれなかった。
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