妖狐の兄妹

1/17
前へ
/18ページ
次へ

妖狐の兄妹

 むかし、むかし、地球には妖怪が住んでいた。  しかし、人間の時代が長く続くほど地球の土地は妖怪にとって住みづらくなってしまった。  賢い妖怪たちはこのまま地球で人間たちと共生するのは危険だと気づいて、住む場所を月に変える決断をした。  しかし、一斉に妖怪たちが移動したわけではなかった。しばらくは地球と月の両方に妖怪が存在していた。  だけど、結局はすべてが月に移り住んで地球から妖怪が消えた。  また、月には妖怪だけでなく少数の人間もついてきた。  彼らにとって、妖怪の世界になった月で生きるのは容易ではない。  だから、人間は偉大なる妖怪に助けを求めた。それに応えて人間に手を差し伸べたのは善なる妖怪、妖狐のギンコだった。  そして、彼女からひとりの若娘が妖狐の力を授かったのである。  その人間はギンコの加護によって妖怪に対抗する力を得た。  人間の里を妖怪の脅威から遠ざけて、妖狐ギンコがいなくなった後も平穏に暮らせた。    妖狐の加護を授かった若娘はやがて愛する男と結ばれて赤子を産んだ。そしたら、赤子にも妖狐の力が宿っていた。  それから、受け継がれる力の血筋を『妖狐一族』と呼ばれるようになった。  地球では産業革命や、インターネットの普及など日々変化していた。  一方で月は時間が止まってしまったかのように何も変わることがなかった。  それに退屈を覚えた妖狐一族の者が出てきた。  それが12歳で育ち盛りのコンタであった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加