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月にある妖狐一族が統治する里は山に囲まれた森多き中にある。
月に森なんかない?そんなものは妖怪のあやかしの術で隠されて、地球の人間が知っている月面の風景の方がまやかしであった。
ともかく、月にある人間の里はいくつかあるが妖狐の住む里が一番大きかった。
妖狐の里の端っこには底が見えない巨大な穴があり、その直径にはアーチ状で赤橙色の橋が架けられてあった。
その橋を渡った最奥に妖狐一族が住む屋敷があった。
さらに屋敷の裏には山があり、妖狐ギンコの住処だったという。
屋敷からふたりの子どもが出てきた。
そのふたりとは7歳のコハルと12歳のコンタで彼らは兄妹である。
兄コンタの服は普段着に対して妹コハルは鮮やかな色の着物を着ていた。
コハルが好きな赤色の可愛らしい着物だった。初めて結ばれた帯に彼女は興奮していた。
今日はコハルの帯解の儀である七五三の日であった。
「普段、身なりを気にしてないヤツが騒ぐ程のことなのか」
「別にいいじゃない。賑やかなこと私は好きだよ。兄ちゃん」
確かにコハルは身なりについてはだらしない女の子であった。
髪は癖毛でいつもはボサボサだったが今回は侍女の手入れで整えられた美しい黒髪に仕上がっていた。
今、彼女は綺麗な自分の髪型に満足している。
だけど、さっきまで侍女の力技で櫛をすいられて「痛い!痛い!」と喚くコハルの声をコンタは聞いている。
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