妖狐の兄妹

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「僕は七五三なんて古くさい行事に浮かれるのはどうかと思う」 「何を言っているの?七五三は最近にできた行事だって父ちゃんが言っていたよ」 「な。だけど、七五三は元々地球から始まった行事だ。それも大昔からあったものらしい」  そもそも何故、地球の伝統行事を宇宙をまたいで月の人間たちが知っているかというと、月には『バク』という妖怪がいるからである。  バクとは鼻が長く体が黒白で(まだら)模様の熊みたいな見た目で、人間の悪夢を食べてくれる善なる妖怪である。  そして、バクは地球の人間の悪夢も食べれる。悪夢は体内で消化されるが、そうではない部分の夢は消えないで取り出すことができる。  人間に友好的なバクはときより人里に現れて、里の人間にその地球の夢を見せてくれるのである。  だから、月の人間たちは地球の七五三という行事をバクの夢で知った。  そして、里の者たちが真似て月でもその行事をやるようになったのである。  だけど、バクの夢は必ずしも『現在』を見せているわけではない。  バクが見せるものは過去の人間が見た夢だったり、未来の人間が見た夢だったりとタイムラグがある場合が多い。  七五三はコンタの言う通りで地球では大昔からあった行事で新しくはなかった。 「コハルよ、知っているか?地球には月にないワクワクするような新しいものが沢山あるぞ」 「例えば?」 「例えば、地球の人間たちは飛行機という空を飛ぶ鉄の鳥を作って世界中を飛び回ることができる」 「え、空を飛べるの!」 「他にも携帯電話、テレビ、パソコンとか地球では色んなものが発明されているぞ」 「すごーい!」
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