妖狐の兄妹

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 ショウジはコンタの反抗的な目に気づいて拳を握った。  息子にげんこつを食らわせて己の身の程を教えてやろうとした。  その時だった。こちらに走って来る里の人間が見えた。  とても、慌ただしくて只事ではないことが見てわかる。  とりあえず、ショウジは握った拳をおろした。そして、息を切らせて来た男に事情を尋ねる。 「何かあったのか?」 「キツネ様!大変だ。妖怪が里で暴れている」 「馬鹿な。里の周りに張ってある結界には反応がなかったぞ」 「それは暴れている妖怪が『木札(きふだ)』を持っているからだ」  男がいう木札とは一部の妖怪が人間の里にも入れるように作られた入里許可証のことであった。  夢を見せてくれるバクのように人間に対して友好的な妖怪が里の結界に弾き出されないように作られた物である。 「そして、暴れている妖怪とはカツラオトコのことなんだ」 「また、あいつか」  ショウジは緊張した分、出てきた妖怪の名前を聞いて一気にアホらしくなった。  カツラオトコとは自称『月に住む妖怪』である。  本人(いわ)く昔は人間に恐れられていた大妖怪とのことだが、月に住む人間たちは信じていない。  なぜなら、実際に会えば彼が小者(こもの)にしか見えないからである。  それでも、妖怪が人里で騒ぎを起こしたのならば妖狐一族は無視出来ない。  ショウジは暴れている理由を聞いた。
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