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「まさか本当に治せるとは思わなかった」
少年は嬉しそうに笑顔で財布から手持ちの三千円を私に渡すと、さっそく河原で試合をする少年たちの群れへ飛び込んでいった。
「たったの三千円……」
私は初めての報酬である千円札三枚を握り締める。
トレードして骨折した右足を手に入れた私は足を引きづりながらバス停を目指す。徒歩帰宅は無理だ。
バスターミナルに到着した際、私は近くのアクセサリーショップで初収入を使い果たした。
割に合わない初トレードだったが要領は得た。
このチケットは使い方次第で大きな利益になる。
チケットを手に入れたことで私の人生は大きく動きだしたのだ。
クラスメイトの森敬吾のことを意識し始めたのもこの時期だった。
河原の少年とのやり取りをして次の日、高校に登校したとき真っ先に声をかけてくれたのが敬吾だった。
「右足大丈夫か?」
明朗快活でクラスの中心人物の彼。
そんな彼にいつも教室の隅で大人しくしているような私は声をかけることも出来なかった。
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」
「そうか? 無理するなよ……あ」
敬吾は私の前髪をちょんちょんと指差す。
「ピンかわいいね。似合ってる」
彼の指差す所には昨日の報酬で買ったヘアピンが前髪を飾っていた。
褒められ慣れていない私は小声でお礼を言う。
「……ありがとう」
思わぬ言葉を憧れの彼から貰えて私は嬉しくて有頂天になった。
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