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エピローグ
彼岸花が囁く夏の暮れを、今でも思い出す。
ブカブカの制服で走り回った校舎に、億劫になって抜け出した数学の補修。
好きな子に告白してフラれた友達を、からかい半分に励まし合った放課後の帰り道も。
みんなみんな、陽炎の向こうに消えていった。
思い出に手も振らず駆け出した日から、日常は余生に変わっていくのだろう。
たった70回程度の夏の思い出を、星のように夜空に浮かべてみる。
すると一際眩しく輝く星座が、一つだけ額縁に収まるように佇んでいた。
その不格好な星座に名前をつけるとすれば、彼女の名前以外には見当たらない。
真夏のオリオンのように清涼で、眠りについた朝の月みたいに幸福なその名前を、もう一度だけ呼ぶことができたなら。
思い出の中でしか生きられない彼女を、今度こそ呪ってやろうと思った。

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