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気がつくと空が明るかった。
クロエが俺の顔を覗いていた。
「にゃーん」
あ、かわいい猫ちゃん。
ぶにゅ。
可愛いなあって見つめてたら顔を潰された。いたい。
「魔力を出しすぎだ。」
クロエは俺の腹に乗るとそう言った。
「イデデデ!!イテエ!!!!」
クロエにのられた腹が痛かった。よく見ると装備も身体もズタボロだった。
......動けん。
「ここまでの威力の"ダッシュ"は見た事ないな。全く。すごいスピードだった。」
クロエはそう言って「ほら見ろ」っと指を指した。
遠くの遠くにお城が見える。嘘だろ。
「私が咄嗟に強めのバリア魔法を張らなかったら、丘にぶつかってお前は死んでたぞ。崖に落ちたみたいにな。」
え、あのえぐられた丘、俺が通った後なの?
まじかよ。トンネル貫通してるやん。
「とりあえず回復するのだ。」
クロエは横たわってる俺の口に、なにか入れ込んだ。
「うげぇぇぇ!!まずい!!!!」
俺の口の動きが止まった。吐きそう、泣いちゃう。
「なにこれ、、(もごもご)」
「それは薬草だ。せっかく私がとってきたのに食わんのか?ん?」
クロエはジローっと睨んだ。
そっか、クロエが。俺のために。
「ありがとう。食べるよ。」
吐きそうにながら俺は咀嚼する。
「よろしい。」
クロエは顔を覗き込んでいたが、俺の左腕の上に丸まった。
それにしてもゲロマズい……
こんなにまずい食い物があったのか、
「おえ、薬草ってこんなにまずいの?回復ドリンクも同じくらいまずいのかなあ。良かった、道具屋でみなぎーるドリンク買おうとして。」
「勇者ギルが買ったのは薬物だろう?それに、回復ドリンクはうまいと聞くぞ。頑張って色々美味しくしてるらしい。」
「そうかぁ、良かった。こんなにまずいんだったら勇者やめようかと思ったよ。おえ。」
「そんな意気込みで辞めてもらっては困るぞ。勇者ギル。」
「冗談だよ、本気にするなって。」
クロエは呆れて首を降っていた。
「まあ薬草にも結構普通のものもあるぞ。」
クロエはしっぽをくねくねさせながら言う
「本当か!って事は美味しい薬草は、近くになかったんだな……」
「いや?あったぞ?」
「ん?え、?あったのにこのまずいやつ選んできたの?」
「そろそろ飲み込むんだ。ギル。」
クロエが顎をあげてくる。
「これ飲み込めたもんじゃないヨ!!!」
「いいから飲めっっ!」
「うぐぐ、」
クロエは俺の顎をグイッと押し上げた。
グビッッッ
「うぅっ、はあぁ。飲み込みました。」
薬草を飲み込むと傷がみるみる治って行った。
腹のキズも、足の傷も。
心地がいい感覚だ。
でも後味まずい......
「回復ドリンクは薄めてあるから、薬草の方が効果が高いのだよ。ギル」
へぇー、そうだったのか。
「あ、普通の薬草とまずい薬草も効果違うのか?」
それなら不味いの持ってきたのも納得だ。
「いや、それは変わらん。勇者ギルは、不味い方が好きかと思ってな。」
「変わんねえのかよ!美味い方が好きだよ!みんなそうでしょ!」
クロエはニヤリと笑った。さすが魔族……体だけではなく心も黒い。
「ただ薬草はな、体力も魔力も回復できない。お前は半分以上の魔力を使ってるし、疲労もしている。だから今は寝るんだな。」
あれだけの威力で魔力半分だけは凄いが。とクロエはボソッとつぶやき、
ギルのおでこにぽふんと肉球を押して、そのまままた、クロエは俺の左腕で眠りに入った。
脱獄はしてしまったが、
クロエのおかげでようやく、魔王を倒す為の修行が出来そうだ。
僕は心配の中決意を胸に、ゆっくりと眠りについた。
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