2.逃走

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 気がつくと空が明るかった。  クロエが俺の顔を覗いていた。 「にゃーん」  あ、かわいい猫ちゃん。  ぶにゅ。  可愛いなあって見つめてたら顔を潰された。いたい。 「魔力を出しすぎだ。」  クロエは俺の腹に乗るとそう言った。 「イデデデ!!イテエ!!!!」  クロエにのられた腹が痛かった。よく見ると装備も身体もズタボロだった。  ......動けん。 「ここまでの威力の"ダッシュ"は見た事ないな。全く。すごいスピードだった。」  クロエはそう言って「ほら見ろ」っと指を指した。  遠くの遠くにお城が見える。嘘だろ。 「私が咄嗟に強めのバリア魔法を張らなかったら、丘にぶつかってお前は死んでたぞ。崖に落ちたみたいにな。」 え、あのえぐられた丘、俺が通った後なの? まじかよ。トンネル貫通してるやん。 「とりあえず回復するのだ。」  クロエは横たわってる俺の口に、なにか入れ込んだ。 「うげぇぇぇ!!まずい!!!!」  俺の口の動きが止まった。吐きそう、泣いちゃう。 「なにこれ、、(もごもご)」 「それは薬草だ。せっかく私がとってきたのに食わんのか?ん?」 クロエはジローっと睨んだ。  そっか、クロエが。俺のために。 「ありがとう。食べるよ。」  吐きそうにながら俺は咀嚼する。 「よろしい。」 クロエは顔を覗き込んでいたが、俺の左腕の上に丸まった。 それにしてもゲロマズい…… こんなにまずい食い物があったのか、 「おえ、薬草ってこんなにまずいの?回復ドリンクも同じくらいまずいのかなあ。良かった、道具屋でみなぎーるドリンク買おうとして。」 「勇者ギルが買ったのは薬物だろう?それに、回復ドリンクはうまいと聞くぞ。頑張って色々美味しくしてるらしい。」 「そうかぁ、良かった。こんなにまずいんだったら勇者やめようかと思ったよ。おえ。」 「そんな意気込みで辞めてもらっては困るぞ。勇者ギル。」 「冗談だよ、本気にするなって。」  クロエは呆れて首を降っていた。 「まあ薬草にも結構普通のものもあるぞ。」  クロエはしっぽをくねくねさせながら言う 「本当か!って事は美味しい薬草は、近くになかったんだな……」 「いや?あったぞ?」 「ん?え、?あったのにこのまずいやつ選んできたの?」 「そろそろ飲み込むんだ。ギル。」  クロエが顎をあげてくる。 「これ飲み込めたもんじゃないヨ!!!」 「いいから飲めっっ!」 「うぐぐ、」  クロエは俺の顎をグイッと押し上げた。 グビッッッ 「うぅっ、はあぁ。飲み込みました。」 薬草を飲み込むと傷がみるみる治って行った。 腹のキズも、足の傷も。 心地がいい感覚だ。 でも後味まずい...... 「回復ドリンクは薄めてあるから、薬草の方が効果が高いのだよ。ギル」 へぇー、そうだったのか。 「あ、普通の薬草とまずい薬草も効果違うのか?」 それなら不味いの持ってきたのも納得だ。 「いや、それは変わらん。勇者ギルは、不味い方が好きかと思ってな。」 「変わんねえのかよ!美味い方が好きだよ!みんなそうでしょ!」  クロエはニヤリと笑った。さすが魔族……体だけではなく心も黒い。 「ただ薬草はな、体力も魔力も回復できない。お前は半分以上の魔力を使ってるし、疲労もしている。だから今は寝るんだな。」 あれだけの威力で魔力半分だけは凄いが。とクロエはボソッとつぶやき、 ギルのおでこにぽふんと肉球を押して、そのまままた、クロエは俺の左腕で眠りに入った。 脱獄はしてしまったが、 クロエのおかげでようやく、魔王を倒す為の修行が出来そうだ。 僕は心配の中決意を胸に、ゆっくりと眠りについた。
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