3.修行と狙われた勇者

1/7
前へ
/71ページ
次へ

3.修行と狙われた勇者

あれから2日。薬草を食べ続け、体が完全に戻った。服はボロボロだけど。 「よおし!魔王を倒すぞ!!!」 「どうやって倒すんだ。勇者ギル。」 あ、そういえば具体的に考えてなかった...... 「スライムから順番に倒して行って、最終的には魔王を倒す!!ってイメージで!」 「せっかく私がいるんだから魔法の練習をしたら良いだろう。そんなんじゃいつまでたっても魔王は倒せんぞ。」  そうだった! クロエは魔法を使える。という事は、上手く練習すれば、俺は魔法が使える勇者になれるかもしれない!! これでニートの俺でも他の勇者に劣らない!! それに超かっこいい!!! 「せんせえ!!!魔法の使い方を教えてくだせえ!!!」 「まずその気持ち悪い喋り方を辞めろ。」 「へぇ!!おやびん!!」 「それもダメだ。」  そしてクロエさんの修行が始まった。 「まず第一に、人間は魔法を使えない。」 「え?まじで??」 ズーン……と俺は落ち込んだ。そんな事ってあるか? 「でもこの前脱獄する時に"ダッシュ"って魔法使えたよね!」 「あれは私が魔法を補助したんだ。勇者ギル自体ができるようになった訳では無い。」 「そうなのかあ。」  クロエはしっぽを左右に振りながら、じぃーと俺の事を見る。 「だがしかし、お主の魔力の多さを見ると、もしかしたら魔力を使えるかもしれないぞ?今まで魔法使ってみようとしてないだけでな。」 「おおお!じゃあやって見る!何やったらいいんだ??」  クロエ先生は俺に近寄ってきた。俺は目線を合わせる為にしゃがむ。 「ファイアというのはどうだろうか。手のひらから熱々の炎が出るイメージをして、ファイアと唱えるんだ。」 クロエはそういうと、ファイアと唱えた。すると手のひらからジュボッッと小さい火が出た。 「普通だったらば、火の玉が飛んでいくのだが、私は弱体化して遠距離魔法は使えないし、威力も弱い。これだけの強さだ。」 「ははは、なんかマッチ見たいだな」 ボボボとクロエにお腹を炙られた アチイ!!! 「じゃあやってみろ。勇者ギル。」 「やってみろっつったってなあ。」  俺は立ち上がって岩の方に手を向けた。 「……ファイア!!」 シーン 「ファイア!!ファイア!!ファイアぁぁぁ!!!!!」  結局ファイアは出なかった。かっこいい俺を期待してたのに。 「じゃあダッシュはどうだ。1回使ってるから分かるだろう。」 「うーん、でも使えない気がするんだけどな……多分ダメだよ」  すると沈黙のあと、 クロエは急に俺のほっぺを殴った。 「必殺猫パンチ!!!!!」 「ヘブッッッ!!!!」 「勇者ギルよ。お主、やっても見ないで出来ないと決めつけ、可能性を潰すというのか。」 俺はハッとした。 「もし成功したら、お主は私無しでも"ダッシュ"ができるカッコイイ勇者になれるかもと言うのに。お主は1回の失敗で、全部諦めてしまうと言うのか……」 「せ、先生!!!!」 俺の目に涙が浮かんできた。 「諦めたらそこで終わりなんだぞ勇者ギル!!お前は本当に勇者なのか!!!?」 俺はその言葉に胸を打たれた。 「先生!!!すみません!!!!もう一度だけやらせてください!!!」
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加