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3.修行と狙われた勇者
あれから2日。薬草を食べ続け、体が完全に戻った。服はボロボロだけど。
「よおし!魔王を倒すぞ!!!」
「どうやって倒すんだ。勇者ギル。」
あ、そういえば具体的に考えてなかった......
「スライムから順番に倒して行って、最終的には魔王を倒す!!ってイメージで!」
「せっかく私がいるんだから魔法の練習をしたら良いだろう。そんなんじゃいつまでたっても魔王は倒せんぞ。」
そうだった!
クロエは魔法を使える。という事は、上手く練習すれば、俺は魔法が使える勇者になれるかもしれない!!
これでニートの俺でも他の勇者に劣らない!!
それに超かっこいい!!!
「せんせえ!!!魔法の使い方を教えてくだせえ!!!」
「まずその気持ち悪い喋り方を辞めろ。」
「へぇ!!おやびん!!」
「それもダメだ。」
そしてクロエさんの修行が始まった。
「まず第一に、人間は魔法を使えない。」
「え?まじで??」
ズーン……と俺は落ち込んだ。そんな事ってあるか?
「でもこの前脱獄する時に"ダッシュ"って魔法使えたよね!」
「あれは私が魔法を補助したんだ。勇者ギル自体ができるようになった訳では無い。」
「そうなのかあ。」
クロエはしっぽを左右に振りながら、じぃーと俺の事を見る。
「だがしかし、お主の魔力の多さを見ると、もしかしたら魔力を使えるかもしれないぞ?今まで魔法使ってみようとしてないだけでな。」
「おおお!じゃあやって見る!何やったらいいんだ??」
クロエ先生は俺に近寄ってきた。俺は目線を合わせる為にしゃがむ。
「ファイアというのはどうだろうか。手のひらから熱々の炎が出るイメージをして、ファイアと唱えるんだ。」
クロエはそういうと、ファイアと唱えた。すると手のひらからジュボッッと小さい火が出た。
「普通だったらば、火の玉が飛んでいくのだが、私は弱体化して遠距離魔法は使えないし、威力も弱い。これだけの強さだ。」
「ははは、なんかマッチ見たいだな」
ボボボとクロエにお腹を炙られた
アチイ!!!
「じゃあやってみろ。勇者ギル。」
「やってみろっつったってなあ。」
俺は立ち上がって岩の方に手を向けた。
「……ファイア!!」
シーン
「ファイア!!ファイア!!ファイアぁぁぁ!!!!!」
結局ファイアは出なかった。かっこいい俺を期待してたのに。
「じゃあダッシュはどうだ。1回使ってるから分かるだろう。」
「うーん、でも使えない気がするんだけどな……多分ダメだよ」
すると沈黙のあと、
クロエは急に俺のほっぺを殴った。
「必殺猫パンチ!!!!!」
「ヘブッッッ!!!!」
「勇者ギルよ。お主、やっても見ないで出来ないと決めつけ、可能性を潰すというのか。」
俺はハッとした。
「もし成功したら、お主は私無しでも"ダッシュ"ができるカッコイイ勇者になれるかもと言うのに。お主は1回の失敗で、全部諦めてしまうと言うのか……」
「せ、先生!!!!」
俺の目に涙が浮かんできた。
「諦めたらそこで終わりなんだぞ勇者ギル!!お前は本当に勇者なのか!!!?」
俺はその言葉に胸を打たれた。
「先生!!!すみません!!!!もう一度だけやらせてください!!!」
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