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「10年後のじぶんへ、元気にしていますか?」
「やっぱり、おしごとは昔からの夢のパイロットかな!!」
「かのじょはきちんと出来ている? まぁ! ぼくならできているよね!」
今日、10年前の自分から、手紙が来た。
日曜日のある日、僕は新入社員として社会の洗礼を受けつつ、日ごろの仕事に忙殺され、休みの日ぐらいと、家でゴロゴロと惰眠をむさぼっていた。
やはり、週に一度のこの時間は最高だ。
ピンポーン
うるさい上司も今はいない。
ピンポーン
頭のおかしいクレーマーも今日は定休日のようで何よりだ。
ピンポーン
日曜日、なんて良い日なんだろう!!
「―――さん、宅急便でーす」
なんで安寧の時は、こうも容易く破られるのか。
そもそも、僕は、今日、何の荷物も頼んでないぞ!!
せっかく来てくれた宅配の兄ちゃんに、心の中で精一杯の悪態をつきながら、僕はモゾモゾとベッドから這い出て、玄関に向かった。
「こちらサインをお願いします」
荷物を受け取り、宅配の兄ちゃんが出て行ってから、誰だ? この安寧の時を邪魔する輩は!! と憤りを感じながら、送り主の欄を睨みつけた。
送り主は母親。中を開けてみると、随分汚らしいカンカンが鎮座している。そこには、
「10年後のじぶんへ、―――より」
これまた汚らしい字で書かれた、過去の自分からの贈り物が書かれていた。
思い出した。
10年前の今日。僕は、何かのアニメで見たタイムカプセルに憧れて、10年後の自分に向けてのプレゼントを作ったのだ。
惰眠を邪魔された苛立ちはどこかに旅立ち、僕はなんだか不思議な気持ちでそのカンカンに手を伸ばした。
蓋を開けてみる。中には、その当時はやっていた金属製のコマ、その当時やっていたカードゲームの最高レアリティ、どこかの海で拾った貝殻、そして一通の手紙が入っていた。
「……」
確かあの時私は、自分の中の最高の宝をタイムカプセルに詰めようと、アイテムの厳選をしっかりしていたはずだ。だが送られたものを見て、今の僕にはそれが最高の宝だとは到底思えない。
今の僕の宝と言えば、この前購入した車、抽選を突破し当たった好きな歌手のサイングッズ、そして初任給で奮発して買ったあの腕時計ぐらいだろう。
随分と子供っぽかったんだな、浮かんだ感想はそれぐらいだ。
僕は次に、汚らしい字で書かれた手紙を拾い上げた。
「10年後の自分へ、―――より」
まぁ宝物と言い張る物たちと同じで、子供っぽいことしか書かれていないんだろうが開けてみよう。
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