イブの呪い

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外は銀世界のままだった。 言われた通りに降雪量は減り、視界はよくなったものの、足元には雪が積もっている。 「さささささ、寒い、寒過ぎるって! コートがなければ凍えてる! 最後にアルコール飲んでおけばよかったわ……」 「防寒対策までお酒に頼ると、後で痛い目見ますよ」 軽口を叩いて見せたが、彼女にコートを貸しているので上半身は正直寒い。 だがそれよりも、僕は長靴なので滑らないが、彼女は積雪用の靴ではない。 滑らないようにと、手を差し出す。 「あら、エスコートしてくれるの?」 「土地柄は無いんだ。滑り止めにはなるけど、エスコートはお任せするよ」 残念、と言いながら彼女は、僕の手を取る。 「……あーあ。クリスマスイブに、今日知り合った男と一緒にいるなんて」 「突然の豪雪で立ち寄ったバーで知り合った仲……なんて、誰が信じますかね」 今までの自分であれば、考えられないような話だ。予定外に想定外を重ねて、見切り発車と言われても仕方がない話だ。 「後悔してる? 大人しくバーテンダーさんにアタックして、砕けておけばよかったって」 「まさか。さっきも言ったけどそこまでマゾヒストじゃないって」 バーテンダーは、不思議な人だった。 必要な時にはそばに居てくれる。かと思えば、二人で話をしたいときには離れている。 気が付かない内に、気配りがなされていた。 たとえアルコールが頼めなくても、あのバーには通いたくなるほどの魅力がある。 「……ふふ。もう店を出たわよね」 「? そうだね」 「初めてのお一人様(・・・・・・・・)、卒業ね」 「────ふふっ」 「ふふっ、あはははっ、あははははは!」 僕の失笑が聞こえると、彼女もつられて笑い始めた。 しょうもない事で笑えるなら、今はそれでいいと思える。こういう気持ちになれたのは、いつ以来の事だろうか。 「さ。クリスマスイブを取り返しましょう」
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