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そりゃ現代では見知らぬ若い女性に声を掛けようものなら、どうかすればセクハラ、いやストーカーと間違われても致し方のないハラスメント社会である。
(声を掛けただけならナンパでしょう⁉)
そのような屁理屈などは通用しません。若いイケメンならともかく、エエ歳した爺だと、警察沙汰も覚悟はしておくべきだ。
だから世の多くの高齢者は歳追うごとに無口になり、時には引きこもってしまうこともあるようだ。
だが、このオンラインキャバクラならお互いが割り切って楽しめるのでは?
こんな考えを頭にめぐらしているところで、背中のドアが開いた。
先ほど頼んでおいたエアコンの温度設定を私に確認するためか、女房がかなり前からドアの向こう側に居たようだ。
「お父さん、さっき誰と話ししてたん?」
「話なんかするかいな・・誰とする言うねんな? こんな小さい部屋で・・誰が居るいうねんな!」
「いや、女の声が聞こえとった! 誰にも負けないとか・・楽しくお話しましょとか・・いったい誰やのん?」
「知らんて・・ホンマワシの知らん人やがな」
「やっぱりや! 知らん人言うて、ごまかしてもアカン!なんで知らん人と話が出来るんや!」
「知らんがな! メールが来たからクリックしただけやんか」
悪い時には悪いことが重なるものである。スポーツジムのコマーシャルが終わった瞬間、再び彼女の顔がパソコンの画面に映し出されたのである。
インターネットのブラウザがそのままで、閉じていなかったのだ。
「今晩は、有島さん・・先ほどはありがとうございました⁉ これで二回目に成りますが・・ハーフタイムの5分で宜しかったんですよね⁉・・有島さん? 有島さんからお呼び頂いたんですよね?・・」
とにかく間が悪かった・・せっかく面白い提供方法のお仕事が有るものだと、感心していた私だったのに・・このタイミングでは・・どう見てもマズイ‼
「お父さん・・この女やな! さっきからこそこそ話してはったんは、いつから付き合うとったんや!」
私にかみついた女房は次にパソコンの画面に向かって叫び出した。
「あんた誰や! うちの旦那とどんな関係や! 水泳の話ししとったから、プールで声かけて来たんやな⁉ それともカラオケで仲良うなったんか? どっちにしても、そんな泥棒猫みたいなことワテは許さへん!そんなとこで隠れてんと、こっちへ出といで!」
「えっ、今は感染防止のために訪問は控えさせていただいております。有島様の奥様・・ですよね?」
「何やかんや理由つけて・・よう出て来んねやろ、それやったらもうエエ! その代わりこうしたる‼」
言い終わったが早いか、私のパソコンを両の手で掴み上げた女房は、その場の床に勢いよく叩きつけた。
「ガシャン!」・・「アリシマさ・・?・・・#?*プツ!」
―完―
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