なんやかんやで

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「仙にも話すが..」 「え..」 仄が慌てて止めようとするのを硯は遮って言った。 「もう子供じゃないんだぞ。 気持ちだけ繋がってればいいって歳でもないだろ。仙は男で、仄は女なんだから。 お互い責任を持たないといけない」 少し怖くなって仄は硯の手を握りしめた。 「...気持ちだけじゃ、駄目?」 不安そうに言う少女に硯はどうしたものかと考えた。男親に育てられ、同世代の友人と接することもなく、同じ女性ということで信頼していた人には裏切られ.. 思っていたよりずっと幼い少女にため息をつく。 こういう時、母親がいてくれたら.. 「きっと、あいつもそう思っただろうな.. 」 思わず呟いてそんな考えは捨てた。 硯は自分自身を笑って、仄の頭に手を乗せる 「今すぐじゃない。でも忘れるな。 自分が女で、母親になりたいと思うときは 必ず来るから。その時のためにも一人で抱え込んじゃいけないこと。」 「...うん」 仄が返事をすると硯はほっとしたのか口許が綻んだ。 「全く...もう少し自覚してもらいたいもんだ」 「みんなに言われる」 仄はふてくされるように視線を外し、枕元にいた猫のぬいぐるみを手に取った。 「ふわふわ..」 思わず笑顔になる仄に硯は肩を下ろした。 「出来ることならずっとそのままでいて欲しい気もする...」 「ん?」 顔を上げると硯は微笑みながら首を振った。 猫の手を指で摘まむと手招きをする。 そのかわいさにクスクス笑い出すと腹部が ずっしりと重くなった。 「大丈夫か、そろそろ痛みも出てくるだろ」 「大丈夫。硯さんに御願いがあるの」 仄は猫を枕元に置くと硯に向き直った。      ◇   ◇   ◇ 病院の一階、売店で飲み物やらお弁当を買い込んだ二人が店から出ると白衣を脱ぎ帰り支度を済ませた硯が立っていた。 「あれ、硯さん一回帰るの?」 祠が気付き声をかけると硯は背中を向け歩き出す。 それに追い付き怪訝な顔で仙寺は聞いた。 「仄は」 「寝た。今日はもう帰れ」 「...何で」 仙寺は立ち止まり、兄の顔を見た。 硯も仙寺の表情を見て  わかってるなら聞くな とため息をつく 「入院中は会いたくないと」 祠が ああ と声を出し、仙寺は眉間に皺を寄せて歩き出した。  「仙」 呼び止めるが、仙寺は黙って病室へと引き返した。 「そうなるよね」 「お互い頑固だからな」 「どうするの」 祠が顔を上げると硯はため息をついて駐車場へ歩き出した。
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