家族のような仲間達

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一息ついて厨房に入ると、相変わらずにじっと鍋を見つめて仁王立ちしている巨人。 「...何だ」 そのすぐ後ろで、思わず立ち止まってその背中を見ていると振り向きもせず信也は言った。それでも黙ってみていると信也は大きなため息。 「今度は何だ」 しっかりと振り向いて腕を組んだ。 「いえ..」 言いづらそうにしていると信也は訝しげに 仄を見る。 「その..ここに来れてよかったなって..思って..」 何だ 急にと言いたそうな顔の信也。仄は首を振ると話題を変えた。 「今日は麻実と会う約束してるので、 帰り大丈夫です」 いつも家まで送ってくれる運転手にそう言った。 「場所は」 「駅で、待ち合わせで」 「...。方向一緒だから乗せてやる」 そう言うと信也は鍋へ向き直って作業を続ける。 やっぱり送って貰うのは変わらないのか.. そう思いながら洗い物をしに調理器具が 貯まっている流し台へ向かった。 勝成が板前の制服に着替えて入ってくると 信也に挨拶をする。 「お前、今日から賄い作れ」 信也がそう言うと、勝成は嬉しそうに返事をした。勝成の頭に手を置くと信也は厨房を 出ていった。 「板長にも食べて貰えるから頑張ってね」 仄がそう言うと勝成は気合いを入れて返事をする。その姿に思わず自分まで嬉しくなった。家には年下の同居人 (ほこら) がいるが、祠はしっかりしすぎていて、弟というより頼り概のあるクラスメートのような感覚で。 自分に弟がいたらこんな感じかと 同い年の勝成を見て思った。 「...あ。私のは要らないから」 慌てて言うと、勝成は少し残念そうに頷いた。ほっ と息をついて洗い物に向き直す。 「結構大変だったんですよ、親父はともかく母さんの方が自分の娘に気を使ってるんじゃないかって、全然話聞いてくれなくて」 背中合わせに、調理台で大量の茄子を切りながら勝成は続ける。 「最後には親父が母さん説得してくれて」 「..そっか」 真っ白な泡を水で流しながら仄は相づちを打った。ちょうど通路から暖簾を捲り上げ 信也が顔を出す。 「仄さんの親はどんな人なんですか?」 一瞬、皿の面を滑っていた指が止まる。 信也は仄の背中を見て口を開いたがそれには及ばず、すぐに仄は答えた。 「母さんはよく知らないけど..」 「離婚したんですか?」 「ん..生まれてすぐだったから何も覚えてない。だけど、父さんは」 流し終わった皿を隣に置く。 「優しい..人だったよ。 すごく、愛してくれたと思う」 その言い方に、勝成は首をかしげた。 「だった?..お父さんって..」 仄は背中を向けたまま。静かに頷いた。 「うん...今年の3月に亡くなった」 「すみません、オレ知らなくて」 慌てて振り向き、仄の背中に謝ると仄は首を振った。 「もう慣れたから大丈夫」 そう言うと出入口から信也が勝成を呼んだ。 遣いを頼むと元気よく返事をし、裏口から外へ走っていった。 「八城(やしろ)
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