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5秒程して、勢いよく仄の目が開く。 初めて唇を交わしたあの(とき)と同じように 「...え..」 声を上げる。それでも離れずにいると仄は首を引いて、仙寺の顔をまじまじと見た。 「夢じゃねえって言ってんだろ」 熱のせいでなく、みるみる赤く染まる頬を 見て仙寺は微笑んだ。 「嘘..」 「もう一回しとくか?」 仙寺が言うと仄は口許を隠すように首を振った。 いつもの反応に安堵すると今度はそっと赤くなった頬に唇を添えた。 「ただいま」 「お、おかえり..なさぃ」 顔を伏せたまま仄は言い、仙寺は身を引くと掴んでいる手を伸ばしたままベットに腕を置き突っ伏して仄を見た。 「最後じゃねえぞ」 「..え?」 「これが最後じゃねえって。これから先 何十回でも何百回でもしてやるよ」 「...。仙、わたし」 「また動物園行こう、水族館も遊園地も、 海でも 山でも じいちゃんちでも」 「仙、聞いて」 仄は掴まれた左手を強く握って仙寺を見つめる。仙寺は仄の手を一度放すと手首のベルトを外した。より顔がよく見えるように柵ごとよせて枕元に肘をつく。 「仙にずっと..言えなかったことがある」 「..うん」 「ずっと。...怖くて」 震えだした唇を空いた右手で押さえ目を閉じる。 仙寺は左手を掴んだまま、仄の頭を抱え顎を乗せた。 「うん..」 「仙にだけは。知られたくなくて..      ごめんなさい」 「もういいって」 宥める仙寺に首を振る。 言わなきゃいけないと分かっている。 これ以上仙の優しさに甘えることは 出来ない。 仄は一度歯を食い縛りそれを告げた。 「私 妊娠してた」 完全に声を失った。 仄の言葉に返す言葉が見つからない。 「あの日、仙とはじめてあった日。 私連れ戻されて..気が..ついたら」 腕の中で何とか言葉を紡ぐ仄は震えてた。 すがるように掴んだ仙の右手を握り締めて 涙を流す。 「...もういい」 仙寺は抱いた腕に力を込め、仄の頭にもたげて頬を添えた。 「もういいから。泣くな」 本当は、言ってやれる言葉を探すより(はらわた)が怒りで煮えたぎって言葉が見つからなかった。それでも目の前で泣き崩れる仄を支えてやらなければ そう思ってた。 「違うの..」 仄は続ける。 「私、怖かったけど、不安でしょうがなかったけど...」 口許を抑えていた右手を仄は伸ばすと、恐る恐る仙寺の背中に回した。 「仙に嫌われるのが一番、       怖くてしょうがない」 「..馬鹿か」 仙寺は腕を緩め胸元に寄せた顔を覗き込む、仄は両目に涙を溜めたまま仙寺を見ていた。    「仙が好き」 それは彼女には許されないはずの感情だった
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