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なんやかんやで
はっきりと告げズカズカと歩いてくるのは
真崎。
「...嘘?」
「そ。あーでも言わないとまた
清水に会わせろってうるさそーだったから」
白衣に両手を突っ込んだまま飄々と言う真崎に、硯は呆れてため息をつく。
「元気そうでよかったよ。出血も思った程
酷くなかったからあとは動かずじっとしててくれれば退院出来るから」
「...騙したの」
仄が起き上がり、睨みつけると真崎は悪びれることもなく言った。
「そうだよ。嘘も方便って言うでしょ。
ああ、あと はい。君からつけてあげな」
仙寺にポケットから手を引き抜くとそれを
手渡す。
「悪かったね、直すのに時間かかっちゃって」
受け取った仙寺の手にはあの日無くした
ネックレス。
「これで脱走する必要無くなったわよね」
逃げれるもんなら逃げてみなさい とでも言うように真崎は挑むような視線を向ける。
呆然とそれを見つめると仙寺が首に着けてくれた。
「あ、ありがとう..ございます..」
ようやく我に返り真崎に礼を言うとため息をついて真崎は病室を後にした。
「...なんかすごい人だね」
祠が苦笑して言うと隣に立つ次兄と顔を合わせた。
「あいつは何より患者の命を優先するんだよ。患者の事情や思いより..
命を救うのが医者 って考えなだけ」
硯はため息をつくと仄の頭を撫でた。
「悪い奴ではないから..」
戸惑いながらも仄はゆっくりと頷いた。
「...さてと」
呟くと硯は弟2人に振り向いて
「飯、どうする。
お前らも何も食ってなかったろ」
「じゃあオレら売店行ってくる」
「俺もか」
祠が手を上げ、仙寺がすぐさまツッコんだ。
「じゃあコーヒーとテキトーに」
硯が言うと祠は仙寺の腕を引いて病室を後にした。
ドアを閉めるとふてくされたようにさっさと歩き出す兄に続く。
「ちゃんと話さないといけないこともあるだろうから少し二人っきりにしてあげないと
どうせ仙兄つきっきりになるだろうし」
「....」
無言で歩き続ける兄にため息をついて、祠は例の手紙を差し出した。
「何だよ」
「仙兄が旅立った日にオレの部屋にあった」
「殺すな、お前絶対わざとだろ」
それを受け取り立ち止まると仙寺は紙を開いた。
「...」
一文目に目を通すとそのまま祠に手渡す。
「読まないの?」
「お前宛だろ」
「...そうだけど」
仙寺は顔を背け、足元に視線を下ろすとため息をついた。
「俺はいい。知りたいことがあれば自分で聞くし、あいつも知ってて欲しいことがあれば自分から言うだろ」
「...そっか」
「お前には伝えておかなきゃいけないって思ったから残したんだろ。
いいんだよ、これからいつでも聞けんなら」
「...。そうだね」
頷くと祠は手紙を大切にしまうと兄の隣を歩き出した。
「で、宮子って誰?」
「それは知らなくてもいいよ。仙兄は」
笑って答えながら二人は廊下を歩いて行った。
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