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流行の最先端に触れられると、その瞳に星が輝いた。
スペース浪原は、刺激の少ない周辺住民にとって「あそこに行けば必ず楽しいことがある」と思える、文字通り希望に満ちあふれた場所になっていく。
運営会社としても結果は上々だった。苦境にあえぐほとんどの企業をよそに、過去最高益を毎月のように叩き出す。業績が横ばいの時はあっても、下がることはなかった。
そんな中にあって、支配人の岩渕(いわぶち)は浮かない顔をしている。
「うーん…」
彼が腕組みをして見つめるのは、「Coming Soon!」と書かれた壁だった。閉館後であり、周囲に客はいない。
ここはモール内にあるレストラン街である。岩渕が見つめる先にも、本来は客を迎える店の入口があるはずだった。
だが今は、関係者以外全てを拒絶する壁しかない。
表面に描かれた絵や他店舗のチラシを貼ることでどうにかその無機質さをごまかそうとはしているが、壁は壁である。客を楽しませる要素など、ほぼ皆無だった。
(なんでなんだろうな)
岩渕はチラリと左を見る。そこにはエスカレーターがあった。
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