その1:奇妙な区画

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 頭でわかっていても実際にやるのは難しく、1年以内につぶれる飲食店は3割にも達するという。 (あの区画に入った店が、その3割に入っただけ…と考えるのもアリだろう。しかし…)  岩渕は納得できない。これまで短期撤退した3つの店に、つぶれる可能性など感じなかった。客の入りも店内の雰囲気も完璧だった。  加えて、3店を運営する会社には確かな資金力が存在する。  その気になれば他の店舗が得た利益を使って、こちらに入れた店を維持することも可能だったはずなのだ。 (ありがたいことに、うちの業績はずっと伸び続けている。うちに店を置いておくことは、必ずその会社にとって強力な武器になる…傲慢かもしれないが、そう思えるほどに伸びている。損して得取れじゃないが、無理にでも残しておく価値はあったはずだ)  スペース浪原は本当に順調だった。  つぶれた店以外はどこも増収増益で、しかも最高額を更新し続けている。  だからこそ、なぜレストラン街入口にあるあの区画だけに「Coming Soon!」の壁を何度も立てなければならないのか、不思議でならなかった。
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