第四十四話 何で?何でッ?何でッ!?

1/1
前へ
/11ページ
次へ

第四十四話 何で?何でッ?何でッ!?

 ───青年からの合図を受けた少女が指を一つ鳴らした瞬間。  彼らが立っていた地は白亜へと侵食され、その場に居た者を一人  残らず飲み込んで行った。飲み込まれた者たちが一瞬の後、次に  目にした光景。それは何処までも続く白亜の世界。  地平線はおろか、上も下も、横すら認識できるか危うい、平衡感  覚を狂わせる狂白の地。彼らが辛うじて立っていられるのは世界  が純白ではないお陰だろう。白に混じるは僅かな灰。  その灰色を、現れた誰それが踏みしめる。  相変わらずのチート級ルームクリエイトスキルを体験。これ伝授  とか継承出来るなら欲しい……って思うのは行けないね。俺が使  ったらただのチート、ロリ神様って言う特殊バックボーン持ちで  ギリグレーだしな。それもアウト寄りのね。  俺はちょっとだけ羨ましいなとか思いつつ、ロリ神様へ此処への  誘導を頼み、見事獣陣営のスパイらしきを捉える事に成功。  スパイ二人は俺と相棒、そしてお姉さんたちに囲まれている。こ  れで───いや。 「サービスの前に暴れられちゃうと困るね。って事で相棒、オナシ  ャッス!」 「出番があるのは嬉しいが、やれやれ。最近は的撃ちばかりだな」  ボヤキながらも相棒はトレンチコートの裏、背へ隠してい腕を前  に伸ばし、構えた手にはハンドガン。装備したハンドガンをその  まま流れる動作で偵察者二人へ向け。一発、二発と容赦なく発砲  を繰り返す。 「何を───ギャ!」 「ややめ───ぐえ!」  放たれた弾丸は目標二人へ命中。事態に呆け避ける暇も無かった  二人はその場で倒れちゃう。何でってそりゃあスタン効果によっ  てね。  うーんロリ神様へ事前に設定を頼んだのだけど、この場では  PVPが強制有効と成っているらしい。……ルーム設定をこんな  簡単に変えられるなんて、マジでチートだなと思う。 「んじゃ次にー……ロリ神様って前此処で家具とか作り出してたよ  な?」 「? 何?イスでも欲しいの?」 「正解! でも俺じゃなくてあっちの二人へね」 「はいはい」  ロリ神様は人差し指を軽く上に払い退ける仕草を一つ。すると白  亜の世界にイスが浮かび上がって来た。アレって家具扱いなのか  な? それともフィールドオブジェクト?  考えながら俺は倒れる二人へ近付き。 「はいはーい。お客さん失礼しますよー」 「ぐ、離せ!」 「我らをどうするつもりだッ!」  口だけで暴れる獣人キャラのお二人さんを、浮かび上がったイス  に一人ずつ座らせ。横へ退いては相棒へ振り向き。 「仕上げを頼みマウス」 「……」  “何だそれは?”みたいな顔しながら、頼まれた相棒はハンドガ  ンを手放して仕舞い、同時に二本の黒色ベルトを手に取り出し。  ベルトを二人へ放り投げる。 「「!?」」  投げられたベルトがそれぞれをの上半身とイスとを一緒に巻き込  み“バチンッ”と固定。相棒のバインド系スキルがちゃんと決ま  ったので、ようやく一息だ。此処ってば一応今PVP有効状態だし  ね。俺がキルされちゃう事態は絶対避けねば。うむ。  緊張の糸を少し緩ませた俺の視界に、相棒の隣で非公開チャット  が表示されている事に気が付いた。 『自分で良かったのか? 拘束系を基礎から育ててない俺より  も、このルームの主に頼むほうがいいだろう。自分のでは“本  気”で抵抗されたら瞬間外れるんだぞ、あれは』 『だいーじょぶだーいじょぶ。その辺りは考えてあるからさ』 『そうか。お前に考えがあるなら、此処は任せよう』  チャットに応えながら相棒へ“まあまあ”とジェスチャーしつ  つ、拘束されたスパイ容疑者二人の前に移動。そしてわざと背を  見せる様にしてお姉さん達へと振り返り。 「容疑者の捕獲も完了したので。お姉さん達はお仕事に戻って  も大丈夫ですよー」 「「「……」」」 「(あれー聞こえてないのかなぁー?)」  しっかりと武器を構え此方を睨みつけるお姉様方。正確には俺の  背後を睨みつけてるんだろうけど、ちょー怖ぇー。何時もの優し  い感じは何処へ? 「だ、大丈夫っすよ。万が一も此処なら起きませんから。何かあっ  てもほら、対処出来るだろうし。ね?」 「「「………」」」」  ビビりながらお姉さんたちを説得。すると静かに武器を下げ、俺  に小さく頷きを贈り。 「「「……」」」  一斉に片膝を付いてロリ神様に傅く。 「はいはい作業に戻りなさい。……退出を許可する」  そんな姿にロリ神様が適当な返事を贈り片手を横へ振れば、お姉  さんたちの姿が光の粒子と成って白亜から消え去って行く。  此処のお姉さんたちはオンと言うかオフと言うか、接客と休憩中  で全然表情が違ったり、今みたいに戦闘時には……。とまあ兎に  角ギャップが凄いな。……睨まれるのは勘弁だけど、嫌いじゃな  いギャップ! 「(にしても。キャラクターの強制退場の権限まであるのかよ。  ナルホド、ナルホドナルホドねー)」 「何見てるの? おまえもイスが欲しいのかしら?」 「いんや。どうせ動き回るしいらんよ」  自らが座る為のイスを生成していたロリ神様は『あっそ』と言い  ながらイスヘ腰掛け、側にはこの場に残る事にしたらしいリスト  ゥルンさんを控えさせる。まるで“こっから先はおまかせ”と言  った具合にだ。まー事前に尋問は俺にって話て置いたけどさ。  それもロリ神様に何されてもややこしくなりそうだだから何だけ  ど、こうして主導権を進んで渡してもらえるのはありがたい話  し。本人は主導権を渡してる気は無いだろうけどね。どうせ面倒  事を押し付けられた!ラッキー!とか、そう思ってるに違いない  よ。 「んん」  俺は咳き込む要素ゼロで、かつて鳴らしていた様に喉を鳴らし。  ロリ神様たちからスパイ容疑者二人へと向かい合う。 「やーなんか、すいませんね? こんな事になちゃってー」  低姿勢、低姿勢でっと。気弱な感じって謝罪から入るとそれっぽく  なるよね。とか考えながら話しを振ってみると。取り囲む人が減っ  たからか、それとも時間が緊張を解したのかも知れない。 「今すぐ俺たちを開放しろ!」 「不当拘束!」 「(わーお元気ッ)」  批判でのお返事が帰ってきた。ナルホドー。 「いやぁそーいう訳にも、ねえ? だってお二人ともって、アレで  しょ? 獣陣営の方なんでしょう?」 「「獣陣営?」」  おん? マジに分からないって反応は意外。演技なら納得出来るけ  ど……! あーそっかそっか。呼称って此方のだもんな。 「もっと正確に言うならですね、この館の主、ニルスと敵対する勢  力。って事ですよぉ」  敵対してる、とはロリ神様からは聞いてないけどね。あったらしい  ちょっかいとかこの前の事とか考えて、此処では敢えて“敵対勢  力”と明言して置こう。つっても、呼称を共有しない程度の繋がり  かぁー。早速の情報だな。 「「!?」」  俺の言葉に明らかな同様を見せちゃう二人のキャラ。ポーカーフェ  イスっての知らないのかね!ウフッ! 「生憎。なんの事か全く分からない」 「そうだ。俺たちはただの一般ぷれいやーだぞ! お前達こそこんな  事をして……。チーターじゃないのか!」 「(おっと)」  そう言われちゃうと此方も確認の仕様が無いと言いますか。いや  ステ見れば分かるんだけど、偽装されてると偽装解析までしなき  ゃいけんし結構面倒なのよね。それに此処までの強気って事は、  NPCを器にしてないタイプかも知れない。自分で体作ってるなら  NPCとは表示されないだろうし。魂持ちの厄介な所はNPCの振  り、PCの振りの両方ができる所で、今の所自己申告以外で見分  け付かない所だよね。マジに厄介な存在だ。 「(口ぶりからすると互いに見分けられないと思ってるっぽい  し、多分見分け付けられないんだろうなぁ。しまった、見分けに  ついてロリ神様と事前に話しときゃよかった)」  さってこっからどう崩しますかねかぇ。一応通報とかって心配は  無いと思うんだけど……。“うーん”と俺が考えを巡らせてい  る、その背後から声が届く。 「バカな獣たちね。証拠なら勿論あるわよ」 「「「!?」」」  イスに踏ん反り返るロリ神様がいらん事を言い出した。口出しし  ない感じだったのに? まさかロリ神様には見分けが─── 「ほら。聞かせてやりなさいよ下僕」  ───そっちかい!聞かせろて! あーもう! 「俺は下僕ではないし、そんな証拠なんてありません」 「? え、でもさっき───」  素早くロリ神様の前に移動し目線を合わせ、圧をこれでもかと掛  けつつ。 「ありませんよ? ありませんからね?」 「───ッ、う、うん」  ロリ神様に“任せろ”と目と体全体を使って訴えかけた。  全く。ロリ神様とは事前に“任せてほしい”と、そう話し合って  いるのにこれだよ。  敵から情報を得られる絶好の機会で、情報を得るには順序ってモ  ノがある。これでもPVPやGVGゲー経験者。捕虜プレイヤーへの  尋問の仕方には、少しだけ心得がある。  俺が容疑者の方へ戻る間際、相棒がロリ神様へ何かを耳打ちする  ように動いてから、相棒は俺の事を理解しロリ神様へ意図を説明  してくれているに違いない。流石の相棒である。 「……証拠は無いんだな?」  容疑者の一人。ネコ科の擬人化みたいなビーストマンキャラが言  う。格好は中世エリアで違和感の無い感じで、普通の衣服姿。も  う一方もそう変わらない。  まずは彼らに安心感、自分たちの方が有利かもと思わせないと  ね。 「えーその、はい……。恥ずかしながら、実は疑わしいと、それだ  けの理由でお客様二人を拘束させていただいた次第っす!」 「なんだと? お、俺たちが疑わしい? そんな訳ないだろう!」  口どもったりいきなり声を荒げたり、情緒不安定な所が十分妖し  いじゃんね。まあ此処は言動を指摘せずに。 「特にその~女性を見る目つき、とでも言いましょうか! 何か  やらしいって他のお客様からもー」  心当たりのありそうなやましい行動を指摘してみる。 「バッ、バカを言うな!」 「そうだ! 魅力的なメスを目で追ってしまうはオスの本能だろ  う!」  それは百パーそう!仰る通りッ。って同意した所なんだけど、生  憎後ろではリストゥルンさんが見てるからね。俺としてもイメー  ジは大事にした所存。許せよ同士諸君、合うべき時が違えば、き  っと俺らは友情を育めたかも知れない。 「あーそうでしたか。此方の勘違い、と。いんやぁーだとしたらそ  れは大変失礼を。申し訳ないですぅー」 「! わ、分かればいい」 「うむ」 「んじゃあ。どうぞお帰りください」  背後から『ちょっと!』とロリ神様の声が飛ぶので、片手を上  げて制止───は出来なかった。『なに生意気な事をー』とか  煩く喚いている。うん。スルーしよう!スルー。  俺はロリ神様から飛んでくる言葉を一つも拾わず。 「ああ言っていますが、誤解なら勿論お帰り頂いて構いません」 「当然帰らせてもらう!」 「どうぞどうぞ」  お好きにどうぞと見守る。 「……いや」 「あれ? どうかしました?」 「拘束を解いてもらって、この場所から出して欲しいのだが…  …」 「あっあー申し訳ない! この部屋はもう少し使うので、お手数で  すが“ロ・グ・ア・ウ・ト”で。お帰り頂いてもー?」 「「ッ!」」  彼らがNPCにしろPCにしろ、ホールでの会話の内容的にロリ神  様側、つまり人外。  なのだとしたら当然“ログアウト”できるはずがない。元の世界  に帰る手段として使えるのかも知れないけど、それは出来ないと  予め聞いてあるのだ。曰くログアウトって仕様が機能してないら  しい。  そんな思惑を込めて強調した言葉に容疑者二人が丸わかりな反応  を見せてくれた。此方としちゃあ会話を盗聴しているって事実、  それは相手方に流したくない情報だ。コイツらの今後を考えると  ね。  だからって聞き出すのに暴力は良くない。暴力で解決すると暴力  が帰ってくる事が大半だからねー。行き過ぎた恐怖もおんなし  で。……何より、いくらゲームの中でって言っても、俺の大好き  なエリュシオンでそんな事はしたくない。  なんで。彼らには自ら崖に落ちてもらう事に。言葉で崖まで案内  をしたのだけど……。いやぁ見事にダイブ成功してくれそうだよ  これ!むふッ! 「あっれ~どうしましたぁ~?」 「い、あ。いや、その……」 「も、もう少し此処に居てやってもよい、かなぁと」  うふ。焦ってる焦ってるよぉ! そりゃ焦るよなぁ、だってプレ  イヤーじゃないんだからさぁ! ログアウトもクソもないよ  なぁ! 「いえいえ。もうすぐ、すーぐログアウトしていただいて。此処を  別の用事で使いますのでぇ~」 「「……」」 「まっさかぁー……ログアウト。出来ないとか?」 「「………」」  顔を向ければ揃って視線をそらすスパイ容疑者二人。 「ナルホドー……ログアウト出来ないって事は───」  俺はそのうちの一人。犬の獣人化みたいなビーストマンキャラへ  近付き。 「オルアァ!」 「キャイン!?」  ロリ神様が作り出したイスモドキを共々蹴り倒し、側に屈んで見  下ろす体勢で。 「テメー敵陣営のヤツだろう? 嘘ついてんじゃねえぞ、ああ  ん!?」 「あわ、あわわわわわ!」 「『あわわ』だぁ? んな口調出してる時点でテメーらがプレイヤ  ーじゃねえ事ぐらい分かんだよ此方は!」  此処はゲームの世界、声も自分の好みに変えられるからちゃうと  は言え、普通の会話でアニメ調やらマンガ調で話すヤツは居ない  だろうよ。文字でもギリなのに、ねえ? 普通に恥ずいじゃん?  そんなん。出来るのは頭ハッピーちゃんかハッピー君だけの口調  よ。 「そんでもしらばっくれるってんならぁ、どうにかしちゃうぞこの  やろう!」 「わ、分かった待て! 認める、認めるから仲間に乱暴しないでく  れ!」  理不尽な脅しに折れたのは、脅されなかった方。ネコなビースト  マン。勿論攻撃を加える気は全く無い。一ミリだってね。 「おい何も言う───!?」 「お話が聞こえないからねー」  倒れた一人の、その尖った口を握って塞ぐ。折角折れてくれたの  のだから、ちゃんと最後まで話して貰わないと。口を塞ぎ仲間思  いな片方へ顔を向ける。 「(にっこり笑顔だよー)」 「!」  “ビクッ”っと一瞬震えて見せてくれた。俺はそんな彼に安心を  一切与えぬ為、できるだけ穏やかで優しそうな笑顔を作り。 「そうですかそうですか。いや、本当の事を言ってくれてありが  とうございますぅ~」  言いながら蹴飛ばしたイスを元に戻して、序に付いてないであろ  うホコリを払う仕草もしちゃったりして情緒不安定さを演出。 「うんうん。嘘は良くない、正直が一番ですよねー」 「……」 「……。……。」  一人は目の下をピクつかせ、もう一人は目を大きくして泳がせて  いる。はーロールプレイってのはオンゲの醍醐味だなぁ。しかも  結構簡単に話しは進みそうだし! これは楽しめて一石二鳥  だわ。 「「……」」 「で、ですねぇ」 「「!」」 「お二人は此処へ何をしに来たのですかー?」 「「……。………」」  黙りを決めちゃう二人。あーやっぱ其処まで簡単じゃない系?  それじゃあ仕方ない。俺はもっかい蹴り倒してやろうとイスに  足を掛けた。 「待て! ……んん。俺たちはお前らの言う獣陣営に属する者だ。  それで間違いない」 「(お!話してくれるっぽいじゃん!)」  足はそのままで続きを顔で促す。 「だ、だからこそ! 我々は互いに不干渉と言う決まりを共有し  ているはずだ! 此処へ来たのは偶然であり、こんな拘束は許さ  れないはず! 直ぐに我らを開放すべきで、これ以上を話す積り  も無い!」 「(あぁー……。一気にツマンない展開)」  宣言通り何も言う積りが無いらしい二人。アレね、ドラマとかで  捕まった時に言うやつだこれ。宣言の後に脅しはちょっと不味い  よなぁ。  んーって事は、つまり手出し紛いとかしちゃうとあっちに口実与  えかねない事態に成る訳か。先に手出しして来たのは相手なんだ  けど、残念此方に襲撃への証拠は残って無いもんね。違法ゲート  はぶっ壊して残骸データも完全デリートして残ってないし。  だから表面上だけで言えば不干渉を~とか逃げは大いにありな戦  法だ。獣陣営とか言うからてっきり頭も獣なのかと思ったら、ロ  リ神様以上に賢いかも知れん。どうしようかなこれ、この逃げを  されると此方としても変な手出しは不味い。  それこそ望まぬ戦争が生まれちゃうし、かと言ってもう手を出し  たに等しいこの状況。難しけど何とか穏やかな感じに話を持って  って解散、ってのも一つの手かな? いや逃がすなら─── 「この状況はお前たちの方が不利なんじゃないか? 幾ら温厚な俺  たちでもこんな扱いは───!」 「そうだそうだ! 不干渉を破るとは許されない罪だ! これは此  方の長に話を持っていき、然るべき罰を───!」  考える俺へヌッコとイッヌが言葉を飛ばす。  獣らしく此方の思案を感じ取ったのか、強気に出てくる二人の容  疑者。『他の勢力がー』とか『折角の平和を壊すー』とかうだウ  ダ宇多と。んっんー……。 「……メンド臭えや」 「「?」」  おっと口から出ちゃったぜ。んま、難しい道はもうさっさと諦  めちゃって。此処からはもっとシンプルに、そして俺が楽しい  方へ持ってちゃおう。メンドイのも悩むのも嫌だしねー。  茶番も十分楽しませてもらったし。 「あー……そう言えばベルトについて話して無かったっすね」 「? 俺たちを拘束してるコレか」 「そ。あ、でもですね、拘束って言っても本気で抵抗したら簡単  に外れちゃう物なんすよ」 「「「!」」」  正面と背後から何かの気配。 「なんで。縛り付ける為の拘束じゃなくて、互いを守る為の安全ベ  ルト! だったりします。誤解させちゃったみいたっすね」 「安全ベルトだと?」 「そっすよ。何せ、偉大なる我が陣営トップ。ニルス様の御前っす  からね」 「「……! まさかあの金髪巨───」」 「の、隣に座ってる幼女の方ね」 「「───ああそっちか」」  背後で何か声が聞こえた気がするけど無視無視。俺は体を揺らし  ながら二人の間へ移動。その後内緒話でもするかの様に二人へ顔  を近寄せ。 「此処だけの話し。ニルス様って神らしく傲慢なんすよ。だからち  ょっとでも機嫌を損ねると消し炭、になっちゃうかも知れないじ  ゃないっすかぁ? それを防ぐ目的なんすよ~ベルトって」 「「!!?」」  顔が素直に“怖い”って訴え始める二人へ。 「なんで。拘束を自分たちで解いてやろうとかしちゃダメです  よ? そんな事したら全身の毛を焼き払うとか───」 「!」 「もしかしたら頭のお耳だけなくなってタヌキにされちゃった  り───」 「!!」 「或~いはこの空間にずーっと放置、されちゃったりねぇ!」 「「!!!」」  一息を入れる振り。 「……ふぅ。いやすみません、ちょっと最近狩りをしてないもの  で~。久しぶりの獲物がニルス様の、俺たちの陣営“に”、来た  物で~……じゃなかったです。迷い込んだお客さん、でしたっ  け? いやぁ間違えた間違えた」 「「………」」  ドン引いてるドン引いてる。  ま。そんなグロは無いけどね、此処ゲームの世界だし。ゴア表現  無い系で、耳とか毛とかピンポイントで焼けないよ。アニメ表現  やトゥーン表現対応のスキルならできっかもだけどね。  んま。何よりもロリ神様にそんな微調整が出来るとも思えない。  きっと丸焼けしか出来ない系だよ、あの子。 「とは言え。お二人の所属が明らかになった今、このまま不当拘束  と思われるのも困りますしね!」 「あ、いや。俺たちは別に───」 「ホホイっと」 「「!」」  片手にショートソードを装備し、二人を守っていた拘束ベルトを  切って外す。 「「……」」 「ふう。これでももう誤解は無いですものね? だから───俺  たちのニルス様を怒らないように、ね?」  自分たちの身の安全に協定やら暗黙のルールやらを盾にするので  あれば、此方は不敬不遜不義を盾に突くかもと匂わせてやった。 『陣営へ許可なく侵入した』『だから撃たれても仕方がない。万  が一にも安全は保証できない』そんな風に。つまり……遠回しの  脅しだね。  常識で言えば協定は守られる物、しかし相手が傲慢で、頭のネジ  がイってる可能性がアレば、どうだろう? 彼らの守ってもらえ  ると言う保証、それはきっと揺らいでいるはず。 「「!(高速の頷きを見せる二人)」」  ほらね。 「んじゃ基本的な尋問には素直に答えてほしんですよ。一応相手  陣営が何してたか~ぐらいは勿論質問する権利ありますからね。  開放はその後で、って事で」  まあ今彼らが受けてたのは“尋問”じゃなくて“拷問”なんです  けど!  国内外問わず映像作品などに見受けられる拷問シーン。あの中で  一番恐怖心を刺激されるのは、これから何をされるかを説明され  ている時だと思う。自分の未来が他人に一つ一つと確定されて行  く事、逃れたくとも逃れられない未来を他人に決定されてしま  う、そんな受け入れがたい事実の決定。  拷問とは、拷問と言う事自体を正確に把握させる事。それこそが  一番の拷問。だと思うんだよね~。実際他ゲーのPVPで捕まえた  捕虜とかに拷問結果を説明してたらすぐに情報くれたし。  勿論VRゲー特有の、肉体的苦痛以外の方法だったけどね。それで  も効果は絶大だったなぁ。  プレイヤー事態に手を下せない状況でこそ輝く拷問方法。戦略系  GVGとかPVP系で鍛えたからねぇ。もっと陰湿な物言いとかだけ  したけどね、あっちでは。 『こんな噂を流して~』『他のギルドが~』『一緒に捕まえた方  が~』とかね。流石に当時レベルまでは持ち出さないけど。こ  っちまで鬱々しちゃうし、アレってば。  俺は過去の陰湿なプレイヤー拷問を懐かしみつつ。 「とりま何で此処に来たんすか?(んま。もう友好を装うのはムリ  だろうなぁ)」 「は、はなす。話すから毛を焼くのだけは……」 「勿論そんな事したくないっすよ。しないっすよ。これって“拷  問”じゃないんで。あくまでも何でウチの領域に?って質問です  よぉ。まさか故意“に”侵入したわけでも無いんですからぁ~。  でもでも、それでも開放するにしてもやっぱねえ? 一応は聞い  とかないとでしょ? 互いの為にも」  笑みを歪ませる事。それを意識して話すと、ネコの方が引きつっ  た顔で。 「話す、話すとも!」  はーオモロ! 本当に手を出すわけ無いじゃんってのは二人には  分からない、分かれないのよな。だって何スっか分からない情緒  不安定な妖しいヤツだからね……今の俺ってば!  狂人ロールは何故こうも楽しいのかと思いつつ、俺は背後に作戦  成功を知らせるため、少し後ろを振り向いてみた。 「「……」」  リストゥルンさんにロリ神様は酷く困惑した様子で。 「………」  相棒は笑いを堪えていた。……もう狂人ロールはしない方がいい  かも。くそう、ちょっと張り切りすぎちゃったかなぁ。 「ん、んん。そんじゃはい、毛と耳を焼かれたくなかったらとっと  話してください。何でこのお店に来たんっすかね?」 「う、うむ。我々は───」  気を取り直し。さっさとこの情報調達を終わらせようと話を進め  た。  ビビらせまくったお陰か獣陣営のスパイはペラペラと喋ってくれ  る。話の内容はあの襲撃自体から始まり、聞けばあの襲撃は獣陣  営全体の総意、によって行われたものでは無いらしい。意外かつ  重要な事をいきなり教えてくれるね。 「ウソではないの?」  同じく意外と思ったロリ神様が質問を飛ばす。 「ほほほほほほほんとうだ! 嘘じゃない!だから焼かないで!」 「焼く? ちょ、そんなビビら───」 「ひいいいいいいいいいいいいい!耳があああああああ!」 「……なんで?」  身を抱くネコなビーストマンと耳を隠すイヌなビーストマン。  ロリ神様が小さく動くだけでビビり散らす二人。  俺は爆笑を堪えながらロリ神様と獣人の間に身を置き。 「ほ、ほら。コレで大、丈夫。俺は話を信じます、からッ」 「あ、ああ。ありがとう」  背後から『あれ?わたし下僕に悪役にされてない?』等の呟きが  聞こえたが、聞こえなかった事にしよう。リストゥルンさんの困  った時の笑い声はしっかり脳内に保存。……脳ってまだ俺にある  のか? いやそれ系は考えちゃダメだ。 「その、俺たちには幾つか群れがあって、『マシラ』って群れの連  中が勝手に此処を襲撃したんだ!」  群れ。ってのはグループって事なのか? それとも彼れは彼らで  身内に異なる派閥が? 「ほう? 因みにお二人さんは何処の群れで?」 「『クルト』と」 「『シンハ』だ」  イヌっぽいのとネコっぽいのがそれぞれ答え、イヌの方が話を進  ませる。 「俺たちと他のヤツらは互いを害さない限り不干渉、それが暗黙の  ルールだ。それを初めて公に破った結果、破られた女神陣営は今  どうなってるのか……。その偵察任務が俺たちに回ってきたん  だ」 「んーでもそれ『俺らは知りませんでしたー』って言い訳なんじゃ  あねえの? 身内守りのさ」 「違う! 本当に誰も知らなかったんだ、だからマシラの奴らは今  “王様”に───」 「!? その話はするんじゃないッ!」 「!」  此方がビビる程の気迫でネコっぽいのが叫んだ。  おっとおっとおっとっとー? 「王様って誰っすかね?」 「……それについては一切話せない」 「そんな事言うとニルス様が怒っちゃいますよ~?」 「「!」」  一瞬ビビって見せた二人だったのだけど。 「……構わない。覚悟は出来てる」 「あの方の話を敵にするぐらいなら、俺たちは死を選ぶ」  っぐ。マジなモードでそんな事言われると此方何も出来ない。  だって俺小市民だし。倒してリスポーンが分かってるならまだし  も、仕様がよく分からんコイツらのライフを奪うとかは当然出来  る訳─── 「あっそ。なら黙したまま還るがいい」 「は? ───ちょ、おまッ!!!」  振り返った先ではロリ神様が片手を上げる最中で、隣の相棒が何  か叫ぼうとしている場面。俺は手にした武器を放り投げ容疑者二  人へ振り返り、そのまま二人を掴んでは目一杯足に力を入れ、飛  ぶように動く。  “ドゴォン!”  背後。容疑者二人が居た場所にはあのインチキ攻撃が一発降り注  いでいた。間一髪の回避。 「───っかやろう! 死なす死なすな、簡単に死なすなッ!」  攻撃を避けロリ神様達の方を見ると。 「あわわわわわわ!」 「何のマネだ? ルプスが消し炭になる所だったぞ?」 「貴様ッ!ニルス様に武器を向けるかッ!」  銃口を米上に当てられビビり散らすロリ神様に、銃口を向ける相  棒。そして相棒へ槍を突きつけるリストゥルンさんと言う。三角  関係を俺に見せる付けてくれた。うーん一触即発。 「何してんの君たち!?」 「だって殺せってソイツらが言うからッ!態度不躾だ(ムカツク)し!」 「俺のルプスを巻き添えにしてか?」 「ニルス様が仕損じるものか! 見縊(みくび)るんじゃない人間ッ!」  リストゥルンさんがロリの肩を持つ。まあ確かにあの範囲だと俺  “は”巻き添えにはならなかったろう。てかリストゥルンさんっ  てああ言う言葉使いもするんだねぇ。目もコワーイ。 「ま、まあ相棒。俺は大丈夫だったから、範囲的にも俺って直撃し  てなかったと思うし……多分」 「……ふん」  相棒が此方を一度見ては武器を仕舞う。俺は相棒が下ろしたのだ  からとリストゥルンさんを見やれば、彼女も渋々と武器を下ろし  てくれた。ふあービビるわ。こんな所でキルパーティーは開きた  く無い。つかこうなったのも。 「オイロリ神様! 勝手に死なそうとすんじゃねえ!」 「だ、だってそいつら喋るくらいならって言ったじゃない!」 「だからってキルはダメなの!」  俺はそっとプレイベートチャットのチャンネルを開き。 「(この二人にはまだまだ“使いみち”ってのがあるんだ  よ!)」 「!」 「(だからー……。今の行動は結果的にはナイスと言っておこ  う、結果的にはな)」  んま。ナイスなのはあくまで俺にとって、だけどね。 「!!」 「(……実は本当に俺を巻き込もうとした?)」 「!!?」  激しくキョドるロリ神様。それは否定なのか肯定なのか。  うーんやっぱアイツ、良きタイミングで始末した方が良いかな  ぁ。あ、てかキルできるのか? でもリスポーンとかされたらメ  ンドイ事になりそう……。いや、今考える事じゃないね。  プライベートチャットの機能を使いこなせないらしいロリ神様は  身振りで俺と会話を試みて。俺はそんなロリ神様から倒れた二人  へ向き直った。そしてそのまま二人の手を掴み。 「大丈夫っすか?」 「「あ、ああ」」  言いながら優しく手をかして彼らを起こす。二人のイスを立てて  あげた所で。 「全くロリ───じゃなかった。ニルスさま、暴力は行けません  よ」  裏から指示を飛ばす。返事は出来ないけど、文字は見えているら  しいからね。 「! そ、そうねー。おまえの───あ。きょうりょくしゃの、い  う通りだわー」  すっごい棒読み。ある種の才能かな!? 「ほんと全く。ああ、そうだ。俺の紹介がまだだったっすね。  俺はニルスさまに協力してる───プレイヤーみたいな者なんす  よ」 「「!!!」」 「あっちのトレンチコートのも俺と一緒ね。先程からの事と言い、  怖い思いをさせてすまなかったっす」 「いや。俺ら怖いなどと」  できるだけ紳士に振る舞いながら。 「ほんと、暴力では何も解決しない。そう、お二人が最後まで自力  で拘束を解かなかった様に、全ては誤解かも知れないっすもんね」  誤解な訳ないけど。 「それで、なんですけど。このまま二つの陣営が衝突するのは皆が不  幸になる結果しか産まないじゃないっすか? だから、どうか対話  の道、機会ってのを設けては貰えないかなー……なんて」 「「!?」」 「驚くのも分かります。襲撃に続き今回のスパイ行為、こんなにも明  確な敵対行為も無いと思ってました。けどお二人の優しい感じを見  て俺は思ったんです。もしかしたら全部誤解なんじゃないか? っ  て。  もしそうなら、これって話し合いで解決できる問題じゃないで  す?」 「「!」」 「ただまあ。此方だとフェアじゃないんで、対話を行う場所はそ  っちでって事になりますけど。……どっすかね?」  見方考え方解釈の仕方って戦略は此方だって取れるんだ。  誤解な訳がなくとも、敵意が無い訳無くとも。“もしかしたら”  の選択肢を此方から提供。この選択肢はこれまでと近々を含め、  両陣営の問題が一気に解決するかも知れない、そんな重たい選択  肢だ。  だから、それを下っ端じゃなくて、重い事態を上に持っていくべ  きと、そう彼らに話を持ちかけてみた。  するとビーストマン達は大きく驚く。まあ驚くよねー。  ただ直ぐに否定が飛んで来ないって事は……。 「少し二人で考えさせて欲しい」  おっし良いぞ。考えるって事は余地があるって事だからな。  折角表面上は相手が圧倒的有利って条件を提示してやったんだ。  乗り気じゃないと困る。 「モチロンモチロン。俺は会話が聞こえないようあっちに行ってる  っすね」  言いながら二人の下を離れロリ神様達の下へ。  一瞬彼らへ盗聴コートでも仕込もうかと思ったけど、気が付かれ  るリスクと会話内容の重要性を天秤に掛け。俺は前者を取り仕掛  けず離れる事に。 「……おまえ。本当に獣なんかと対話する積り?」  三人の下へ行くとロリ神様が不機嫌丸出しで話しかけてくる。  相棒とリストゥルンさんは未だに互いを警戒してる様子だ。  下手に刺激しない方が良さそうなので、俺はロリ神様の質問に応  える。 「まあ対話で済むならそれはそれで平和的じゃん?」 「でも攻められたのは此方よ? 平和的解決を向こうが望んでると  は思えないわね」 「それな。っつっても此方襲撃の証拠残ってないから、追求すると 『お前らの難癖だー』って逃げされて、逆に此方が攻められそう  なのよね。こればっかりは証拠確保を怠った此方の負け、あれに  関しては、だけどね」 「……私への侮辱、軽視。不敬に対する怒りがとても収まらない  のだけど?」 「まあまあ」  怒った感じのロリ神様を宥めつつ。 「和平は口実で、実際これってば相手の懐に入るチャンス、だと  思えば良いんよ」 「?」 「分かんねーか? 対話はあくまで試みるつもりってだけで、で  きれば時間稼ぎ。できなくても今までと何も変わらない。でも、  対話を行う事で向こうの様子、つまり情報が得られるって訳  よ」 「なるほど。おまえの狙いはそっち、懐へ潜り込む事なのね。  懐に入れれば、躾のなってない獣を……。考えてるじゃないお前  ってば」 「いやぁ~それほど!」  この提案の()()をロリ神様に悟られる訳には行かない。  そうして俺がロリっ子の機嫌を持ち上げつつ、ちょっと雑談を  している間に。  二人のビーストマンが相談を終えたらしく此方へ。 「分かった。俺たちとしても衝突は望んでいない」 「だから対話はありだと思う」  お! これは最高の流れでは!?  よしよし、此処から日程やら日取りを決めて、此方のロリを説得  して俺を大使的扱いにして向こうへ向かう。其処で獣陣営のトッ  プ、或いはナンバーツーと対話して情報を得られれば、俺の立ち  回りの幅も増えるってもんよ。……もっと言えば鞍替えも。  そう、全ては俺と俺の世界の為。ロリ神様は報復をお望みだけ  ど、んなのは知らん。  上手い具合に話を回せればワンチャン衝突を回避して、更には俺  の見の安全も─── 「ただし。付いてくる者には───ここの長、つまりニルス神も加  えてほしい」  はいダメ。終わり終わり。  相手の条件は絶対に無しの物。リストゥルンさんすら付いて来て  欲しく無いのに、一番ダメなヤツの同伴を条件に出されたよ。  ……つか冷静に考えてその条件は絶対受け入れられる訳は無い、  とか思わないのか?あの二人。 「いや。それは不味いんじゃないっすかね?」 「そんな事ない。誤解や和平の話なら、お互いの長同士がするべき  話だろ?」 「右に同じ」  うーん正論。あーそうなる、そう取るかぁ……。どうする、断る  か?  折角の第二チャンス、だけどロリ神様を連れ出すのは余りにもリ  スキー過ぎる。外じゃ使い物にならないからね、この神様。  情報入手の機会をみすみす捨てると言うのも……。いや、この条  件は余りにも向こうが有利すぎる。  敵陣に行こうとは思わないが、それだって大使的扱いで俺が単身  乗り込むだけなら、活路はある、あった。大使を傷つければ不干  渉を明確に破る事に繋がる。だから安全は一定保たれるはずだっ  た。  だけどトップを連れ立ってしまっては意味が無い。トップ共々や  ればいいのだから、相手からすればね。  俺一人なら逃げの手段もいくらでもある。……此方の内情とか持  ち出せばね。従属なりなんなりで収める話しもあったんだけど  なぁ。これじゃご破産だ。  んま。 「「……」」 「(どっちにしろこの話は流したかな。アレじゃ)」  表情、言葉、態度。全てに含みありと、俺の目と感が他意を感じ  取ったからだ。  ……人を見る目と言うのが俺にあったけ? なんだろう、敵意と  言うか害意と言うか。それらに似た何かを今、彼らから感じるっ  てこの感覚は一体?  いいや、俺も野生的嗅覚があったのだろう。それにこう言う時の  直感は信じたほうが良いって、色んな娯楽作品で見てきたしやっ  てきた。  大方俺の企みに気がついたのかな? それとも失態の帳消しを考え  たのか。何にせよ誘いは断るべき。  危機回避を発揮すべくこの流れは断ろう。そう思い、口に出して  言おうとしたのだ。なのに、ああなのに。 「良いわ。ついて行ってあげる」 「バッ!?」  頭が一気に混乱した。相手の思惑も条件も何も分かってないのか  このロリっ子は? 「それは良かった! なら早速向こうへ話を持ち帰ろう」  このロリっ子勝手な返事しやがって! 「……(親指を立てる幼女)」  その上此方に作戦通りね!みたいな顔しやがって!  違うだろうが! ええいクソ! 「いや待て! 此処は後日改めて詳細を───!」 「ではすまぬが! 女神よ───我らが領地へ跳ぶ許可を頼む!」  コイツ! 今わざと俺の言葉を遮りやがったな!  ……つまりなにかある!マズイ! 「? いいわよー」 「バババババ───!??」  バカなロリっ子が話をずんずんと話を進めて行く。  俺がロリ神様を止めようと動きかけた瞬間。 「!?」  攻撃の気配を感知して飛び退く。俺の元いた場所を風の刃が通り  抜けた。明らかな攻撃で、その主を確認する暇はなかった。  何せ。 「ニルスが転送を許可する」 「「「!」」」  ロリ神様が許可を出し、ビーストマンの一人がお椀の様な器を取  り出し、それを弾いた瞬間。()()()()()()()()()強烈な光りに包  まれてしまったからだ───  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇  ───眩い光が光量を下げて行く。 「───」  光の収束の後。  目に写ったのは緑豊かな何処かの町、その外れだろう。  敵視し合って居た相棒とリストゥルンさんも、ようやく状況に気  が付き、呆然としている。其処へ誰か、いやあの二人から声が掛  かる。 「ようこそ。俺たちの()()()()()()()()()へ」 「そして───此処が貴様らの墓と知れ!」  武器を取り出し此方へ構えるビーストマン二人。此処が敵の陣地  ど真ん中かぁ。何で此処にぼくたちいるんだろ? あぁ~救いは  無い感じっすね~。  こんな状況。ロリ神様と俺の口から出た言葉は─── 「「あわわわわわわわ!」」  彼らが誘われたのは緑豊かな何処で。住人である獣が言う。  此処は我ら獣の王国、ビーストキングダムだと───
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加