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幕間
───何処かの中庭。
天井も無いその場所に、空から陽の光が降り注ぐ。
広い広い中庭。されど花壇や庭園などは無く、また整備された石
作の道等も無い。花も木も、自然と、ただ其処に在るだけ。
そんな中庭の中央。力強い大木が一本立つその場所で。
『……』
木陰に寛ぐは大きなナニカ。影がその姿を確かとしない。
『『『……』』』
大木の向こうで寛ぐナニカを見つめるは、オオカミ、オオワシ、
オオグマ。彼らの側にはそれぞれ似た種族が数匹と控え。そんな
彼らよりも一歩前。
『………』
『……』
いつか酒場を襲った魔猿と、隣には一回り以上大きなオオサルの
姿。
『勝手ヲしたな、マシラ』
『全くダ』
オオカミとオオワシが二匹の背へ言葉を飛ばし。
『クマラもそうは思わなイか?』
『……言う事ハない』
オオグマへ同意を求めるも、反応はイマイチだ。
『これだからサルはヒトに近い───』
『ウルサイ!』
誰かの陰口に怒りを顕にしたのは、オオサルの隣。
『またそうやってオレたちをバカにしやがっテ! ドウドウと出
てこイ!』
『『『……』』』
『なら此方から───!』
立とうとした中サルを隣のオオサルが片腕で押さえつける。
『冷静ニ、ナレ』
『……スマナイ』
腕から開放された中サルが座り直す。オオサルがチラリと後ろを
見ては。
『陰口ヲたたく、そのアサマシサこそ、ヒト、の様ダ』
『『『! ……』』』
オオカミ、オオワシ、オオグマの背後。彼らに似た獣達の目が光
る。
『それよりも。始末をどうするカ』
言ったのはオオグマだ。
『やはりこコは───』
『しかシそれは───』
『……意見ヲ───』
『我らノ答えハ───』
大きな四匹が話し合う中。大木の木陰で二つの小さな影が動い
た。
『黙れ』
『『『!!!』』』
木陰で寛ぐナニカの言葉。それはとても優しく、力強い声。
ナニカの声が聞こえた瞬間四匹は黙り、声の方を注視する。
「今帰ってきたって連絡が───」
「なら判断は───」
ナニカがナニカへ話しかけている。そして。
『……偵察の者が帰った。彼らの話を聞いてから、判断を下す。
良いな?』
『『『!』』』
その場に集った全ての獣が寛ぐ声の主へ頭を垂れる。
大木の木陰。
大きなナニカに寄り添うは二つの小さな影───
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