2隣の席の彼女

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「君なんなの? 掃除が好きなの?」  放課後になり、昨日と同じように掃除を押しつけられた暦と真司だけが教室には残っていた。  昨日あんなにも執拗に掃除をしたにも関わらず、教室にはまばらにゴミが散らばっていた。 「好きなわけじゃないけど……、皆大変そうだから……」 「こんな掃除一つの時間惜しむほどアイツら忙しくもないだろ」 「でも、困ってる時は助け合わないと。友達だし……」 「友達じゃないだろ。あの人たちと話してる時、全然楽しそうじゃないよ、君」 「……そ、それはまだ、この学校に慣れてないから」 「まあ、なんでもいいけどさ」  今日は吹奏楽部の活動がないこともあり、窓越しからグランドで練習するサッカー部の声が小さく聞こえてくる。 「なんで、今日も掃除手伝ってくれたの?」 「だから、昨日言っただろ。一週間以内に死ぬって」 「どうにか出来るの? それ」 「多分。頑張れば、多分」 「えっ!?」  そこまで大きくもない暦の声は予想以上に教室に響いた。 「どういうこと? 多分ってなに?」  暦は集めたゴミをちりとりに入れるついでに真司に詰め寄った。 「過去に、その呪われた人を助けたことはあるけど、なんていうか、なにが起こるか分からないし、結構難しい」 「でも、昨日は全部わかってたみたいに助けてくれたよね?」 「昨日のは例外。アレは分かってたけど、今日からは分からない」 「なにそれ! そもそも呪いってなんなの? 私が誰かに呪われてるってこと?」 「知らない。誰かに呪われてるのかもしれないし、幽霊的なものなのかもしれないし。俺が知ってるのは、君の肩、いや、背中にくっついてる黒い影に取り憑かれた人は死ぬってことだけ」  真司は淡々とゴミをちりとりに入れながらそう言った。 「ええっ、背中についてるの!?」 「うん。でも見えないなら気にしなくていいんじゃない?」 「い、言われたら気になるよ……」  暦が自分の背中を見ようと一生懸命体を捻っている間に、真司はゴミ箱にちりとりの中身を放り込んだ。 「とりあえず。今、君が出来ることは周りに気をつけることぐらいだろ」 「そ、そんなので大丈夫なの?」 「まあ……多分」  結局は運だと思う、とは言えないまま真司は言葉を濁らせた。
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