2隣の席の彼女

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 掃除を終えた二人に待っていたのは、教師からの激励。  ……ではなく、明日配布するプリントのコピーという第二の雑用だった。  掃除をサボった生徒を叱るでもなく、雑用を引き受けた生徒に更に雑用を押し付けようとしてくる教師に、真司は苛立ったが、暦が反射神経のようなスピードで受け入れたせいで、文句の言葉も引っ込んでしまった。  コピー機から大量に出てくるプリントを二人で椅子に座って眺めていると、コピー機のある部屋の外からつい最近聞いた声が聞こえてきた。  コピー機のある部屋は職員室のすぐそばにあり、大方教師に用がある生徒の話し声だろう。 「……てかさ、あんま言いたくないけど、暦ってあんま心開いてないよね」 「あ、思った、それ。なんかいっつも受け身だし、こっちも気遣うよね」 「本当それ。しかも、ちゃっかり男子に頼るところとか普通にぶりっ子じゃない?」 「それね~。確かに暦って男ウケしそうだもんね〜」  遠慮なく交わされる言葉の応酬は、二人のもとまで届いていた。  声の主が先ほど二人に雑用を押し付けた教師と楽しそうに会話をしているのも、今のこの状況では重くのしかかった。  真司は何も言うことができなかった。  ある意味、あの言葉は真実でもあるのだ。嫌なら断ればいいし、何か言いたいことがあるなら言わなければ伝わらない。  ただ、その友人達の本音は、きっと、正しく伝わらなかった上に最悪の形で暦に知らされたのだ。  ふと、真司が暦の方を見ると思いがけず暦と目があった。  その時の暦の作り笑顔ほど、酷い顔を真司は見たことがなかった。
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